司会 ヨーロッパ企画の代表で、作・演出の上田から、今回の作品について説明させていただきます。上田さん、お願いします。
上田 今回の『ボス・イン・ザ・スカイ』という作品ですが、2年ほど前からだんだん、舞台の地形、なかでも3次元の方向、「高さ」をうまいこと使えないかな、という方向に作品の興味がいきはじめていまして。 いろんなお芝居を見ていると、上が空いてることが多いんですね。下のほうでお芝居をやって、上のほうが空間的にあいてる、という。なにかそこが、単純にもったいなくて、うまいこと使えないかなと。 舞台であったりとか、地形とか、そういうところから物語が生まれてくるということに、僕はすごく興味があって、そういう発想で、そもそも「どんな物語をやろうかな」ということよりも、「今回はどんな地形をモチーフにしようかな」っていうところから考えるというのが、最近、常になっています。

 で、今回が円形の、舞台がお客さんの真ん中にあるという劇場です。四方囲みの、まったく真ん中に孤島のように舞台がポンとあるような、まさしくそういう、方向性のないものを舞台にしようかなと思っています。 「じゃあどんな地形を作って、どんな方向感覚を生み出せばいいのか」と思ったときに、そうだ、今回は「空」でいこうと。(円形の舞台では)すべてのお客さんから見て、右とか左とかないんですけど、上下っていうのは確かにあるので、「じゃあたとえば、下から上に物語が進んでいくお話にしよう」とか、「上から落ちてくる、というようなことを起点に物語を考えよう」という風に思っています。

 具体的なお話の内容については後ほど説明させていただきます。とりあえず、今回の公演の、地形的な概要に関しては、ここで止めさせていただきます。
司会 ありがとうございました。それでは続きまして、今回の作品を制作するモチーフとなりました、映像作品をご覧いただきたいと思います。4年前に上田誠が監督しました『ドラゴン』という作品をご覧いただきます。上田さん、これはどういう作品なんですか?
上田  これはですね。いわゆる「ドラゴン」っていうのは、まさしくファンタジーに出てくる「竜」ですね。その、ファンタジーというものを僕なりに「夢見物語」じゃなく、現実のレベルの落とし込んだら、こういうことになるぞっていうのをやってみた作品です。
 この『ドラゴン』という短編、5分弱ほどの作品なんですけども、4年ほど前に作った作品です。これを一度見ていただいて、今回のお話をさせていただこうかなぁと思っております。
司会 それではさっそく、『ドラゴン』をご覧ください。
 
上田

 えー、ありがとうございます。
 この作品は、中学生の男の子が、突然クラスメイトから「君も伝説の勇者だよね」と誘われて、一緒にドラゴンを倒しに行こうと旅に出るんですが、結局「ドラゴン」というものを求めて行きついた先が、ホームレスの人たちが住んでる集落で、お互いのことを幻獣の名前をつけて呼び合っていた。主人公は主人公で、その、紋章と見なされる手の甲のアザが、実はいじめを受けた痕だった、という。
  お互い、なかなか現実に適応できないものどうしが、ファンタジーに惹かれるまま、ファンタジー世界でいう「勇者」「ドラゴン」と出会って、「ファンタジーのなれの果て」みたいな、「どん詰まり感」というのを、なんとなく作ってみようとした作品なんです。
 こんなふうに、いわゆる「ファンタジー」ってすごく・・・舌ざわりがいい、と言いますか。僕も、昔からゲームが好きでRPGなんかをやってたんですけれど、すごく、勇者が剣で、クリスタルで、魔物を倒して、すごく惹かれる世界で、自分がもし勇者なら、って憧れるのと同時に、もちろん現実はそんなもんでもなくて、っていう・・・。「人間ってついつい、自分にとって都合のいい物語を求めてしまうもんだな」っていうのがちょっと面白いなぁ、と。そういう使いかたで、「ファンタジー」というのを使ってみたいなぁと思っておりまして。
  それで、この『ボス・イン・ザ・スカイ』に戻るんですが、こういった世界観のイメージのもと、「ボス」という、いわゆるゲームとかに出てくる「ラスボス」とか「中ボス」とか言われる、「敵の親玉」という「世界に不幸をもたらす存在」のもの、なんですけど、それが空にいる、と。・・・という伝説を真に受けてですね、空を目指すひとたちのお話を書いてみたいなと、思いました。
  とはいえなかなか、そのまんまのファンタジーなストーリーでいくわけじゃなく、しかも今回円形の舞台で客席と舞台が近くて、けっこう生々しいというか、リアリティがある距離で見ていただけるということで、そのへんも「ファンタジーになかなか、なりきれないさまの、面白さ」っていうのもコメディにしていみたいなぁと思っております。それが、今回の公演の、大まかな概要となっております。よろしくお願いします。

司会

ありがとうございます。それでは、今回の『ボス・イン・ザ・スカイ』のCMをご覧ください。

 
司会 ここからは、皆さんよりご質問等頂きまして、お答えしたいと思います。
---- 今回のチラシやCMでも登場したキャラクターたちが、勇者などのパーティになるんだろうと思っているんですが、そういった"VSモード"というか・・・、RPGの要素が入ったお芝居になるんでしょうか?
上田  ありがとうございます。そうなんですよね、ヨーロッパ企画にはいま10人の役者がおりまして。一般的なRPGでは・・・例えば「ドラゴンクエスト」とかは、パーティが4人とか。それぐらいの人数で冒険に向かうというのが確かにイメージにはありますね。諏訪にちょっとそういう中ボス的な役で裸になって、やってもらおうかなぁとか。(笑)
  いろいろ考えてるんですが・・・、やっぱり人間を演じて欲しいな、というのもあるので(笑)。毎回そうなんですが、ヨーロッパ企画の芝居って全員が"こっち側"にいるパターンというか。10人の役者のうち、味方が5人・敵が3人・謎の人物2人とかがあんまりなくて。10人"こっち側"にいて、いない敵に対してワイワイ言ってるというのが、すごく多いんですけれども。今回もそういった形を保ちつつ、ちょっとずらしてもいけたらいいなという、そんな芝居にしたいと思っています。
---- お話としては、「ボスと戦う」というよりは「ボスを見つけるまでの道中」を観せるという感じになるんでしょうか?
上田  つまりボスと実際に戦うのかどうか?ということですよね?それはまさしく「ボスが空にいる」という状況で、実際にボスと戦うってなった時に、自分たちが戦うカラダになっているのか?とか・・・殺陣のシーンってヨーロッパ企画では今までしたことがなくてですね。なぜかっていうと、僕らが普段、日常で戦ったりケンカしたりっていうことがないので・・・そういうリアリティはすごく大事にしたいなと思っているんです。
  例えば・・・むかし「風雲たけし城」という番組がありましたけど、あの番組ではすごいアトラクションが用意されていて、それに向かって素人の鍛え抜かれていない肉体がワーッと行って、もみくちゃになるという番組だったんですけど。今では「SASUKE」とか筋肉隆々な人たちがアトラクションに挑むっていう形をとっていますよね。そういう番組って、ぼく実は苦手でして・・・というのも自分がスポーツ苦手っていうのがあるんですけど。なので、弱い肉体が生き生きとしてる「風雲たけし城」とかの方が大好きなんですよね。
  ということもあって、戦うシーンが中心になるような話にはならないとは思います。「ボスが本当にいるかどうかさえ分からない時のだらっと時のした会話」であるとか、「もしかしてボスは近くにいるかもしれないっていう緊張感からの体の変化」とか・・・そういったものを描きたいなと思っていまして。なので、延々と敵と戦って戦って前に進むというような話よりは、実際の体に基づいた話になるかなとは思っていますね。
---- チラシの画がとても好きなんですけれども、ひとつ気になっているところがありまして・・・この連れている犬は出演しますか?
上田  犬は残念ながら出演はしないと思うんですけれども(笑)、そうなんですよ。この4人だけの撮影をしに公園に行ったんですけれども、たまたま「犬とかいるといいよね」って話になって、犬の散歩にきてたおばあちゃんに「(その犬)かわいいですね」って言ったら、貸してくれたんで(笑)。なかなかね、犬の後姿っていうのは、がんばって撮らないと撮れるもんじゃないので、偶然を生かしての撮影になったんですけども・・・はい(笑)。
---- 毎回地形を生かすお芝居ということで・・・今回は円形でかつ高さもあるということで、話の語り口の変化であるとか役者さんの観せ方であるとか、「ヨーロッパ企画ならでは」っていうことは何か考えてらっしゃいますか?
上田 ありがとうございます。今まさにそこが焦点となっておりまして・・・例えば4方向から見られるプロレスであるとか相撲とか・・・だいたいは2人から3人なんですよね。単純に、重ならず観やすいっということがあるんですけど。ふとヨーロッパ企画の役者が10人もいる事実に気付きまして、ちょっと愕然としたんですけども・・・「ほとんどの人が見えないじゃないか」と。そこをじゃあどう逆手にとったら・・・と。
  しかもヨーロッパ企画の芝居って、入れ替わり立ち代りではなく大体の人数が舞台にいるという芝居がほとんどだったので。そのアンサンブルを観せつつ、かつお客さんに全方向からストレスなく観てもらえるのかということを、いろんな模型を組んで下から眺めたり上から眺めたりしつつ、こういう配置なら満遍なく観れるとか考えていたんですが。しかも"高さ"というので、真ん中に柱を立ててしまうと、柱の向こうへの死角ができてしまったりするじゃないですか。円形で舞台をされるときは、だいたい全方向から観えるように、ということで土俵みたいなひらべったい土台とかでされることが多いと思うんですね。
  なので僕らはせっかくなので、そこに何らかの地形を加えたいなということで、ちょっと変わった舞台にしたいと思っていますので、そこをお楽しみに・・・ということでいいでしょうか?
司会 以上で、制作発表を終わらせていただきたいと思います。皆さま、ありがとうございました。