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本多:あ、ありがとうございまーす。
ジョージ:「マリアッチ」。
ムロ:「マリアッチ」。
本多:こっちも「マリアッチ」?
ジョージ:こっちは「ホアレス」。
本多:「ホアレス」!
ムロ:「ホアレス」。ありがとうございます!
本多:うぃース!
2人、かるく乾杯
ムロ:ジョージさんが選んでくれて。
本多:『ジョージズバー』で、ジョージズセレクションですね。
ムロ:セレクション。
本多:なるほどー。


本多:でね。もっかい話をムロさんの歴史に。ムロ歴史に戻すと。
ムロ:はい。戻してください。
本多:その、養成所を出たあとは、どうしてたんですか?
ムロ:養成所をでたあとは……。えーと、養成所をでる直前までは、「なんかあるだろう」と思ってたの。
本多:あ、そのあとに? 未来があると?
ムロ:そうそうそう。やっぱりあの、なんだろうなー。そのときはまだ未来があると思ってたから。何かしら、どっか探せばみつかるだろうと思ってたから。卒業してからしばらく、なんにもみつからなかったの。
本多:探したけど?
ムロ:うん。ま、養成所みたいなのはさ、いくらでもお金出せば入れるんだけど。お金出すのもなんか……。あんま意味ねぇなとおもって。
本多:うん。
ムロ:で、お芝居するとこないのかな、と思ったらそこで舞台のページがあって。本見たときね。「舞台っていうのは、すぐお芝居が出来るんだ」ってね。この、安易な発想? 知らないから(笑)。
本多:(笑)
ムロ:無知、無知。
本多:舞台見て、「テレビ行かな」と思って、けっきょく舞台(笑)。「舞台、お手軽やな」って。
ムロ:そうそう。「舞台は、すぐ立てんだな」っていう(笑)。もう最低なこの、発想? 舞台を軽視した? そこでまたお金ないからさ、やっすいとこ探して。
本多:(笑)!
ムロ:でも、「知らない人がいるとこの劇団なんて入っても、ぜんぜん先に将来ねぇぜ」ぐらいに思ってんの、バカだからさ(笑)。まだそんとき「大人計画」なんてぜんぜん小さくて、あったのよ。
本多:あったの!?
ムロ:あったのよ。
本多:あったんですか!?
ムロ:舞台のチラシのなかに、「大人計画、募集」みたいなのがあったのよ。
本多:うわー!!
ムロ:あったにもかかわらず。そのときには、まあ僕は「東京乾電池」ていう劇団に。
本多:はぁー。あの、柄本明さんのねー。
ムロ:柄本明さんがいるところ。ほんとにそんとき、ぶっちゃけ言うとさ、柄本明さん、ベンガルさん、名前は知ってましたよ。そんときベンガルさんは、『あぶない刑事』とか出てて。
本多:はーはーはー。
ムロ:柄本さんも、志村けんさんのコントの……。
本多:『志村けんのだいじょうぶだぁ』?
ムロ:そう! 『だいじょうぶだぁ』とか、『バカ殿様』とかで、おでん屋さんとか芸者のコントとか、それで知ってたの。で、その2人とか綾田俊樹さんとか、有名な人がいて、しかも値段がやすいっていう。1か月1万きるくらいだったの。
本多:はぁー。
ムロ:で、それで。乾電池を選んで、でも乾電池はオーディションがあるからさ。俺は「そうとう必死な、厳しいオーディションになるぞ!」ていう心がまえで。
本多:(笑)

ムロ:で、オーディション内容は、書類審査の通った後って。「そりゃそうだ、書類審査通るだろう俺だって。俺は役者本気でやろうと考えてる」って。
本多:俺だってね。負けない、と。(笑)
ムロ:そう、「ぜったい負けないぞ」と。で、通りました。通ったら、「第二審査が面接です」と。プラス、「3分から4分くらいの、ひとり芝居」。なんでもいいです、と。笑いじゃなくてもいいです、みたいな確か。
本多:へぇー!
ムロ:設定を自分で決めて、役も自分で決めて。ま、だから「3分間、みんなの前でお芝居してください」みたいな感じだったの。
本多:はぁはぁ。え、その「みんな」っていうのは? それは柄本さんとか?
ムロ:柄本明さんはもちろんいます。社長もいます、制作の人もいます、あとあの人もいました。今はやめちゃったけど、看板女優さんの広岡由里子さんもいて。あとはもう、うえのほうの俳優さん。ま、ベンガルさんはお仕事のほうでいなかったんだけど。柄本さんがいただけで、もう「うわっ!」とおもって。で、面接して、挨拶して。で、ひとり芝居で。
本多:はぁー。
ムロ:で、俺は数学がとくいだからね。
本多:数学科だっけ?
ムロ:うん、大学が数学科だったからね。まあ、人よりも多少はね、できる。多少人よりも、アタマがいい。人よりも、数学は偏差値がたかい。
本多:なに(笑)。
ムロ:や、事実事実。俺、結果だしてるじゃない? 東京理科大学てとこに受かってるからさ。
本多:ああ(笑)。中退やけど、まあ受かったのは、受かった。
ムロ:そそそそそ。1回偏差値70こえたから、数学。
本多:(笑)!!
ムロ:そういうのは書いといてもらって。書いといてこれ。
本多:こうやって全部じぶんをさらけ出して、なにしゃべってるか意味がわかんなくなる。
ムロ:そうそうそう(笑)。
本多:なるほど、それで?
ムロ:「数学の塾の講師」ていう設置で、ただ、数学の授業をやるっていう。即興芝居をやったの。
本多:うわ! 新しいっていうか。
ムロ:笑い、いっさいナシ。
本多:わぁ。
ムロ:そこでさ、数学のことだから、すぐ言葉がでてくるじゃない? それがねぇ。ぐうぜんにも功を奏し。そんときさ、柄本さんが俺に質問したもん。
本多:え、なんて?
ムロ:「君はー、経験あんのか?」って。「いや、僕は、養成所でやっただけなんで、舞台とか初めてなんですけど」つって。そしたら柄本さん、「へぇー、けっこう喋れんなぁ」って、人前で喋れんだなぁみたいな、感じのこと言われて。
本多:わ! わ!
ムロ:「あーいや、とんでもないっす!」とか言いながら、「受かったな」とおもいました。
本多:(笑)!!

ムロ:だって思うでしょ(笑)! 柄本さんがそんな「けっこう喋れんだな」みたいなこと言ったらさぁ。
本多:ほめてるわけですからね。
ムロ:ぜったい受かるでしょ?
本多:あー。
ムロ:でも、案の定うかりました、そこは。おかげさまで。そこで、乾電池に入った。
本多:それはもう日々、レッスン?
ムロ:えーと、週2日レッスン。レッスンがやっぱ、乾電池って独特……じゃないのかな、ほかの劇団もそうなのかもしれないけど。何期かうえの、芸人さんの世界でいうと「にいさん」ですよね?
本多:はい、はい。
ムロ:先輩のかたが来て、その人のまえでグループ分けされて、即興芝居をしろ、と。「なんでもいい、設定もぜんぶ自分たちでかんがえて、だいたい5分かそれくらい、即興芝居を見せなさい」と。
本多:へぇー。
ムロ:それをずーっとやって。で、たまに柄本さんも来たりして。柄本さん来ても、やっぱり即興芝居をやる。
本多:覚えられてたり、したんですか?
ムロ:いや、オーディションのことは覚えてもらてなかったけど、クラスがあってさ、柄本さんが初めてきた日。緊張するわけよ、みんな。みんなグループ分けされて、即興芝居。2人1組だったかな、そんときは。俺は即興芝居したのよ。その即興芝居が、「その日講師が来るまえの5分間」を切り取ってやったのよ。講師、つまり柄本さんが来るまえの5分間を。
本多:はぁー! なるほど。ドキュメンタリー?
ムロ:ドキュメンタリー。そしたら、柄本さんが、終わったあとに、僕にね、「君のやろうとしてることは正解だと思う、僕は」って言ったの。「ただ、君の向かおうとしてる場所は、すごくせまい場所で、行けば行くほど、どんどん失うこと、見えなくなるものがあるから、それだけは気をつけるように」って言われたの。
本多:……うぅっわー!!
ムロ:初めてのときに。それでいま、分かんないよ? 分かんないけど。俺はべつにそんとき、「芝居なんて分かんねぇ」と。もう答えがねぇし、芝居するということ、それすらの意味も分かんないから、だからドキュメンタリーという設定をやったんだけど。だからそういうことを言ってるのかなー。という。だから「芝居をしない」ということに向ける、芝居?
本多:はぁー……芝居……。あーはぁー。
ムロ:分かんないよ。俺には、分かんないよ? いま酔ってるしさ。
本多:うんうんうんうん。
ムロ:いま俺の考えてた「芝居をしない」ことが正解なんじゃないかな、とそんときは思ってたのよ。
本多:え、でも、それを行くと……?
ムロ:「失うことがある」「見えないものが出てくる」と。
本多:はぁ……。そっか……。
ムロ:から、「気をつけるように」。「ただ、間違ってないとは思うよ」って言ってくれたの。
本多:……へぇー。

ムロ:で、授業終わりに、柄本さんが「これから時間あるやつ、いるか?」って言いだして。みんなやっぱり座長に言われたらさぁ。「あれ、なんかチャンスがあるんじゃねぇか」みたいにみんな手ぇあげて。俺もここぞとばかりに手ぇあげたんすよ。そしたら、俺指さして「おまえ、あいてんのか」て言うから「ああ、はい、あいてます」て言って。「これから何にもないのか」「ないです」って言って。
本多:うん、うん。
ムロ:「じゃあおまえ、ついてこい」って言って。その稽古場から、俺だけつれだされて、2人っきりで歩いてたのよ。
本多:どこ行ったんですか?
ムロ:そこで行ったのが、三軒茶屋ですよ。三軒茶屋の、シアタートラムとパブリックシアター。そんとき2つが出来たばっかのころなの、それ。
本多:はー!
ムロ:そんで、そこに行くまで俺、ずっと後ろついてったから、2人で電車乗って。電車乗ったときもさぁ。柄本さん、「おい、あの2人何に見える?」て言うから「あ、付き合ってるカップルですかねぇ」って言ったら「そうだろ? なんであの2人はカップルに見えるか、わかるか」って言われて。「いや、なんとなく見えたからそうなんですけど……」って言ったら「いや、ちがう。距離感。男と女の距離感。あの距離感は付き合ってるしか、ありえない」とか、そういうことすごい話すわけですよ。
本多:へぇー!
ムロ:で、深けぇな、深けぇな、わかんない、わかんないって思って。そしたら「たとえば、そしたらあの2人に、もうひとりが入ってきたら状況は一変するだろ? 芝居っておもしれぇよな」って。
本多:わあー!! すごい!! マジで!? 課外授業じゃないですか!
ムロ:課外授業! 俺ぜったい気に入られたと、思ったの。「気に入られてんじゃん」と思って、俺。
本多:わー思う、思う!
ムロ:で、それでたどり着いたのが三軒茶屋のパブリックシアター。急にさ、裏口みたいなとこ通されて。そしたら柄本さん顔パスなわけよ。管理人みたいな人に。「おー来たんすか、どしたんすか」「おーちょっと遊びにきた」みたいな感じで。で、シアタートラムっすよ。座ったらさぁ、舞台稽古中。だれだと思う?
本多:だれ?
ムロ:石橋蓮司さん。堤真一さん。2人芝居。
本多:わっ! えええー!!
ムロ:あったのよ、その2人芝居っていうのがさ。シアタートラムで。そんときの舞台稽古で、もう柄本さんドーン座って。俺分かんねぇから隣座ってさ。わけ分かんないとこで笑ったりすんのよ、柄本さんが。で、「おまえ、おもしろいか?」っつって。こわい顔で言うからさー。
本多:(笑)!
ムロ:なんて言っていいかわかんないのよ。「いやーどうっすかねー! いやー!」って。そこでさ、さすがにさ、あの2人芝居でさ、おもしろくないなんて言えるわけないじゃない? 「おもしろいっすね」って言ったら「どこがだよ」って言われて。一蹴されて。そのあと2人、沈黙で。
本多:うわあー! ひええ。
ムロ:で、そのあと「おい出るぞ」っつって、行ったら喫茶店だったの。「おまえ、飲みたいもん飲め」って。飲みたいもの飲めって言ってもさ、喫茶店だから「じゃあアイスコーヒーで」みたいなさ。
本多:そこいいじゃないですか(笑)。そんなん別にだって。いやもう、うれしいでしょ、そんなん。
ムロ:(笑)いや、俺そんときまだ緊張しまくってたからさ。でもそんときにもう、おなかいっぱいっていうくらい満足したわけよ。「楽しいな」みたいなさ。目のまえに「柄本明」がいてさ、言うこと言うことが、やっぱりドンドン入ってくるわけよ。そしたら、急に柄本さん、台本とり出したわけよ。忘れもしない。映画でさ『身も心も』ていう映画で。
本多:へぇー?
ムロ:えっとねぇ。かたせ梨乃さんかな? 出てるのが。まあちょっと、エロティックな。大人の映画さんだけど。その台本をとり出して、俺に渡すの。で、「おまえ何々読んでくれ」って。
本多:喫茶店で? えー!
ムロ:「俺、ためされてる!?」って。
本多:わあーっ(笑)!
ムロ:もしかして、すぐに本公演とか出れる「シンデレラボーイ」なんじゃないかとか、思う……。
本多:思う思う、思う!
ムロ:思うでしょ!? ここはよっしゃ、もうこんなかんじで、腕がもうガンガンふるって、やる気マンマンでさぁ。
本多:(笑)!
ムロ:柄本さんがババって言ったらさ、俺がババって読んでさ。けっこう気持ちもこもってババってさ。柄本さんがババってきたら、ババって芝居を、バってしたわけよ。「どうだ!!」みたいなさ。
本多:うんうん。
ムロ:そしたら柄本さんが急にもう、すっごいムカついたご様子で。「ちょっとおまえ、いいんだよ、感情とか入れなくていいからさ。棒読みでいいから、読んでくれ。俺セリフおぼえたいだけだから」って。
本多:(笑)!! ウワー(笑)。
ムロ:ウッフー!
本多:フ〜!!

本多:あ、それで!!
ムロ:あっ、ちがうちがう(本読みのときは)棒読み、はそうじゃなくて、それは稽古していくうちに、乾電池のシステムで、いまはちがうかもしれないし、俺はかなり時間たってるから、もう記憶が間違ってるかもしれないですよ。だから、誤解のないように言うと、それはいま俺がとらえたかたちであって、ぜんぜん乾電池のシステムの「こうである」ってことじゃないからね。
本多:あー。
ムロ:俺がこう思った、てことだからね。で、乾電池は、俺がその、入ったときはセリフとか「極論」棒読みでいい、と。柄本さんも言うんだけど。セリフは、内容をつたえようとしなくていい、と。セリフはそれだけで内容がつたわるもんだ、と。たとえば仲のいい兄弟だったら「仲いいよね」っていうことを芝居も説明するし、セリフも説明しなくていい。ぜんぜんもう簡単に。「仲いいよねー!!」なんて言わなくてもいい。「仲いいんだよ」って言うだけでもう。だから、「仲いい」っていうのはセリフだけでもう説明されるんだから、「極論は」棒読みでいい、と。セリフは、置いてくもんだからさ。それこそセリフの交換でいい、という感じ?
本多:なるほどね。……そのカメラ目線は(笑)。
ムロ:あっいまカメラ目線だった? 飲んでるから、ごめんなさい(笑)。
本多:(笑)
ムロ:で、「棒読みでいい」っていうは、そう、本読みのときはね、よく言われるのは、俺もそう思うんだけど「戻るところ」をつくる、っていう意味で、「棒読み」で、まずニュートラルに。
本多:「戻るところ」っていうのは?
ムロ:なんかこう、やってて「相手と合わねぇな」っていうとことか「これ意味ちがうなぁ」ていうとことか、意味をつけて最初セリフをおこしてしまうと、最初に声だしてセリフにおこした場所、っていうのが「戻るところ」になっちゃう、ていう考えかたがあるの。
本多:ああー。そっか。
ムロ:だから、もう、ほかのとこに戻れない、ていうか、ゼロに戻れなくなっちゃうから……。
本多:あ、「はじめに戻る場所」として、「ゼロを作っとく」ていう。
ムロ:だから、なんにもない状態?
本多:ああー。僕なんか、だれかが書いてたんですけど、柄本明さんが「役者はセリフを、順番に言えばいいんだ」って……。
ムロ:あっ! そうそうそう。言う言う。「セリフは置いてくもんだから」って。
本多:でも、その、そこに至るチカラが、柄本明さんがすごいんですよね?
ムロ:そうそう。そうなんだよ。だから、「その経験があるから」の、「順番でいいんだ」って思うのと、「順番でいいんだ」って教わって「順番でいい」っていうのは……、だめでしょ?
本多:そうそうそう。だって柄本さんって、「順番でよくする」ために、いろいろやるわけじゃないですか?
ムロ:そう! で、けっきょく今その話がそうで。けっきょくそれの柄本さんの話が、意味が分かんなくなってきて、さらに柄本さんの劇団の先輩たちが、柄本さんの言うことをずっとくりかえし言うから、それも分からなくなって。だから、柄本さんの言ってることの意味が分かるためには……。
本多:そとから見る?
ムロ:そう。離れるしかない、と思った。それで、この劇団辞めよう、と。で、柄本さんとおなじ状況にたつまで、自分のチカラでがんばるしかない、と思った。なんとかはい上がって、それで柄本さんのまえで、ヒザがふるえずにお芝居ができたら、ひとつの目標達成。目的達成。


本多:それは、今まである?
ムロ:ない。
本多:まだない。
ムロ:ないー。お会いしたことない。あれ以来。……あっ。でも、あれ以来じゃなくて、あの後もっかい会ったことがあって、じつは。
本多:なに?
ムロ:俺がそれこそ、乾電池をその後やめて、路頭に迷ったときに、何をしていいか分かんないときに、尊敬できる人は柄本明さんしかいなかったから、俺、柄本さんに手紙を書いたの。
本多:えぇ。
ムロ:「じつは、乾電池で僕はまえ研究生で、柄本さんにこういうこと言われて、その言葉を信じて今やってるのですが、どうしていいかわからないので、ぜひともお話させてもらえませんでしょうか? よければ、付き人でもいいから、もう一度いちから勉強させてもらませんか?」みたいな手紙を、俺は、ほんとどこにも行く場所がなくなって、柄本さんに書いたの。で、電話番号書いて。じゃあその手紙おくった3日後か4日後に、柄本さんから電話がきたの。「柄本明です」って。で、「すみません、手紙、急に送らせてもらって、すいませんでした」って言ったの。そしたら「わるいんだけどさ、おまえのこと正直覚えてねぇんだ」って。
本多:(笑)!
ムロ:「そうっスか!」っつって。で、柄本さんは「付き人って、そういうのも絶対とらないし、俺そういうタイプじゃないから。ただ、ほんとに悩んでて、どうしてもできないんであれば、べつに相談のることもできないけど、まあいちど会おうか?」って。それでまた1対1で会ってくれたの。で、これこれこういうことで、って説明したら「おまえ、なんとなく覚えてるけど、ぜんぜん興味ねぇし覚えてねぇや」みたいなかんじで。で、そんとき、橋爪功さんと柄本明さんが2人芝居やってる稽古中だったの。
本多:『検察官』!
ムロ:そう。それそれ。それをやっていて「その稽古見学するくらいだったら、俺がクチきいてやるから、まあそれでも見にこいや。見にきてなにがあるか分かんねぇけど」みたいなかんじで言ってくれて。で、稽古を見学させてもらって。
本多:うんうん。
ムロ:で、最後は、俺けっこう毎日行ってたら、ある日「おまえ、いつまで来んだよ」っつって。
本多:(笑)!
ムロ:ブチギレされて。本気キレあるじゃない、顔で。「柄本さん、本気でキレた」と思って(笑)。「あっ、だいじょうぶです! 明日から来ません!」っつって。
本多:けっこう行ってたんですか(笑)?
ムロ:けっこう行ってたのよ。すがるように行ってたからさ。
本多:あ、そっか。そのすがる感じが……。
ムロ:そう、すがる感じが、鼻についたんだろうね(笑)。
本多:なるほどね(笑)。
ムロ:そういうことしちゃうタイプだから、俺。

本多:でも、そこまでムロさんにさせる、その柄本明さんの魅力ってなんですか? 僕、柄本さん好きなんですよ、すっごい。なんやろ。
ムロ:いや、わっかんねぇけどなー……。いや、俺たぶんね、また浅いこと言うけどね、あの人、くるったようにお芝居好きだよ。……たぶん、そこだと思う。
本多:芝居が、好きで好きで。
ムロ:突きつめちゃってるんだよ、だから。分かんないよ? ほんと。浅いことばで言うと「どうやったら楽しめるだろう」っていうだけの突きつめかたで、あそこにいってるんじゃねぇかな、って。
本多:……それはあるかも分かんないねぇ。
ムロ:32歳で、役者やってまだ13年くらいの人がさあ、柄本さんのことまだ見ぬけるとは思わないけど、そうじゃないかな、と。だからこう、影響力がくんのかなと。言葉がぜんぶねぇ、「そんなことねぇよ」っていうんじゃなくて、なんか入ってきちゃうんだよね。
本多:僕、すごい思うんが、劇作家のひとって、ある経験とかこえた人達の意見って、すごいなんか高尚になっていくじゃないですか。で、役者で、柄本さんのそういう「言葉」っていうのは、その域にいってるから。それってやっぱ劇作家のひとって「どうやったら、おもしろい劇つくれるか」っていうのをずっと考えて、突きつめた結果、そうなるっていう……。
ムロ:うんうん。単純化したりとかさぁ。そうそう。たぶん、好きじゃなきゃ、あんな風になんねぇだろうなって。「おもしろいと思われたい」じゃなくて「自分がどう楽しむか」しか考えてないから。俺もそこ行きたいけど、俺はまだ「人におもしろいと思われたい」って欲があるからさ、まだ。
本多:うんうん。
ムロ:柄本さんなんかは、その欲は昔あったと思うんだけど、その欲がそうとう満たされての「次」、だと思うから。俺はまだ欲があるからね。目先のひとたちに、おもしろいと思われたい。
本多:あるある。それはでも、僕らの年齢的にいったら、まだ持ってないとダメなことかも、分かんないすよねぇ。
ムロ:うん。思う。思います。
本多:……共演したい?
ムロ:えーと……。
本多:まだ、いや?
ムロ:共演は、正直いったらまだ、かな。
本多:まだいや。
ムロ:もうちょっと、もっといろんなあそびを知って、柄本さんのまえで緊張しながらも、「いまの自分はこうだから、いいや」「こうで、いいんだ」、「こうだから仕方ないんだ」でもいいけど、「俺は、こうだ」っていう、なにかあったうえで、できれば……。おなじ現場で、どっかでセリフを交わしたりできれば。あのひとが生きてるあいだに、おなじ舞台に立ちたいですけどね。
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