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2人:かんぱーい!
本多:ここでね、ミュージシャンのPV撮ったんですよね? 僕、そんな別に経験ないけど、映画とかやったら「どういうふうに作られてるか」とか、なんとなく分かるんですけど。PVっていうのは、まあ監督は工藤さんがやってるわけじゃないですか? それって、ミュージシャンの人とも「どんなPVにしようか」っていうのは話し合うんですか?
工藤:んーそうですね。
本多:ミュージシャンの人が「こういうのやりたい」って言って、で「こういうのどうですか?」みたいなのが。
工藤:けっこう、もうそれが主流。
本多:へぇー。(ビールを飲んで)あっ、これなんか、すごい青りんごっぽいですよ。「ニュートン」。ちょっと飲みます?
工藤:ほんとに? (ちょっと飲んで)おいしー。
本多:おいしいでしょう? え、じゃあね、PVはそういう風にミュージシャンの人と、話し合いで決めるっていう。
工藤:私は、「音楽があって、PVがある」っていう考えかたなんで・・・。基本、その音楽性と、彼らがやりたい方向性っていうのは、ちゃんと聞きたい。それに合わせたい。
(と、そこへ、帰りがけに、工藤さんに声をかける、お店の看板バーテンのロンさん。)
ロンさん:里沙さん! そいじゃ、また! え、今来られたんですか?
工藤:はい。あの、ちょっとなんか今、取材を・・・。
ロンさん:取材だったんだ。
工藤:それで、ちょっとこう、イケメンのバーテンさんを紹介したいな、と思って。
ロンさん:わあー、「イケメンのバーテンさん」! ありがとうございますー。
工藤:あ、でも、もう帰るんですよね?
ロンさん:あっ、なんかあります?
本多:あ、大丈夫です、大丈夫です。
ロンさん:なんかあったら言ってくださいねー。
工藤:はいー。ではまたー。
本多:失礼しまーす。
ロンさん:どうもです!
(帰っていく、ロンさん)
本多:むっちゃ常連さんみたいな感じじゃないですか。
工藤:いやいや、私は違うんですよ、ほんとに。


本多:え、じゃあ、PVは「音楽ありき」ってことですよね?
工藤:そう。だから、逆にいえば、こっちが「映像で、音楽性をどう引き出すか」ってことしか・・・。限界があるんですよね。だからやっぱり、仕事の仕方があるっていうか。映画は、自分のやりたいことを、確実に実現させるような・・・。
本多:そっか、もう映画は、ほんとに自分がやりたいことって感じなんですか?
工藤:そうですね。
本多:はあー。僕ね、2年前に工藤さんの映画に出させてもらったじゃないですか? あの映画、リハーサルもけっこう、やったりしたじゃないですか? いっつもリハーサルっていうのは、やるんですか?
工藤:えっと。『少年歌』ていう作品までは、本格的にPVとか音楽のお仕事とかしてて、その間に、大学時代からの流れで撮ってた「自主映画」っていうスタンスでやってたんですよね。
本多:それは、以前工藤さんが撮った作品?
工藤:そう。で、そこでは、シナリオの能力とかじゃなくて、自分の感性だけで・・・。そんとき、はっきり言って私は、映画始めてすぐ、賞を取ったりとかして。宮台真司さんに、コメント書いてもらったりして。「ダヂンチ」とかで、私を天才だとか、言ってもらったりしてたんですけど。でも、そこに、自分の実力が追いついてないっていうか。評価していただくのはありがたいんですけど。で、悪いことに、自分でも「天才だ」とか思ってしまって(笑)。
本多:そうなんや。褒められたら、まあ、思いますよねぇ(笑)。
工藤:そうそう。それが、24歳くらいのときで。ちょうど、キセルの仕事を始めたか始めないか、ぐらいのときで。ほんと、会う人会う人に、「君は才能がある」みたいなことを言われ続けてたんですけど、実際は、努力が足りなくって。そんで、25歳の、『少年歌』を撮ったあたりでやっぱ・・・。目の肥えた人、って先を見越して評価してくれるけど・・・。
本多:はいはいはい。将来性も含めて、評価してくれるけど。
工藤:でも、実際に観客とか、見に来る人っていうのは悪いこともアンケートに書いたりするわけで。すっごい傷ついて。『少年歌』のプロデューサーにも、すっごい言われたんですけど。まあ、私があまりにも子供で、自覚が足りなかったんですけど。調子に乗ってたんですよね(笑)。
本多:まあ、褒められた調子乗りますもんね(笑)。
工藤:いきなり映画始めて、2年くらいで結果出しちゃったから。でも、「絶対に、行くとこまで行けるよ」って思ってたから。で、そのとおりになったときに、同時に、けっこう罵倒されたりとかして。
本多:ああ、褒められたり、「あんまり」って言う人がいたりってこと?
工藤:そうです。
本多:まあ、そういう両極の評価されたってこと?
工藤:まあ、要は、子供だったんですよ。
本多:工藤さんが?
工藤:はい。
本多:ほー。・・・「子供だった」ってのは?
工藤:「子供だった」ってのは・・・アホだったってこと(笑)。
本多:なんで(笑)? 調子に乗ってたってこと?
工藤:調子に乗ってたっていうよりは・・・。まあ、「映画っていうのは、大変なんだな」っていうことに、気づいたんですよ。

工藤:で、基本から勉強しなおして。その間、ずっと映画を撮らなかったんですよ。ストーリーが一番大事だと思ったから。それまでは、適当だったんですよ。
本多:感覚で撮ってた?
工藤:うん、感性だけで撮ってた。でも、「感性だけでは、映画は撮れない」ってことに気づいて。建築的な要素もあるじゃないですか、映画は。
本多:建築的っていうのは・・・建物の「建築」っていうこと?
工藤:そうです。あのー、設計図を作って、そこからみんなが動いていくわけじゃないですか。すべてのセクションが。
本多:そっか、いろんな人が関わって出来るものだから。
工藤:だから、ひとりで「天才だ」って思っても(笑)、出来ないってことに気づいて。
本多:(笑)。
工藤:人を動かすために、完璧な設計図を用意しなきゃいけないっていうことに、気づいたの。それをだいたい、「大丈夫かな」と思えるくらいに掴むまでに、4〜5年くらいかかりましたからね、やっぱ。
本多:え、じゃあ、『飛行艇〜』の、前の作品撮ったのは、4〜5年前なんですか?
工藤:だって、『飛行艇〜』撮ったの、私29歳のときじゃん。24歳だからね。『少年歌』撮ったの。
本多:そっか『少年歌』が、『飛行艇〜』の1個前か。
工藤:それまで、すごい自分で自信がなくなってて。で、大学受験で言ったら、単語とか勉強するようなことを、ずっとやってたんです。
本多:4年間?
工藤:そうです。音楽の仕事やりながら。
本多:そっか、PVとかやりながら。へー。だから、ちゃんと、設計図という、言ったら「シナリオ」をちゃんと作って、それによって動くように、リハーサルもちゃんとやって、ってこと?
工藤:そうです。全部、自分が思い描いてたことを、実践したんですよ、初めて。完璧に。で、そこから完成まで延びたのは、素材を見たときに「足りない」って思ったからのよ。「私の理想郷には、とても追いついてない」って。
本多:え、撮影した素材が、ってこと?
工藤:そう。だから、合成も、そこで覚えたの。
本多:じゃあ、ちゃんとしたビジョンがあるからこそ、リハーサルとかもやるようになって、以前の『少年歌』とかではそこまでリハーサルとか、やんなかった。
工藤:うん。ちゃんとしたビジョンがあるからこそ、撮影した素材を見て、やっぱ役者さんとかそういう問題じゃなくて、「設計図に完成図がまだ追いついてない」っていう。まだ。
本多:そっか、その設計図っていうのは自分の頭にあるし、実際撮った映像っていうのは現実のもんやし、それのギャップがあるってこと?
工藤:そうそう、そう。「まだいけるだろう、この作品は」っていう冷静な、自己評価が。
本多:撮影から完成まで2年たってますもんね。
工藤:で、ついに完成するんですけど、でもそれができて初めて、私のプランは完結する、みたいな。


本多:僕ね、そうとう、撮影のときにね、追い込まれた記憶があるんですけど。僕の役名は三郎っていうんですけど、工藤さんに「違う、三郎くんはそうじゃない」「それじゃない」とか、そういうのをすごい言われて。それってやっぱ、工藤さんの中に明確なビジョンがあったから、それに、ちょっと僕が違ったから「違う」ってことやったんですよね?
工藤:そうですね。あの、あとは本多くん自身を見て、「本多くん自体をあんま知らなかったんだ」ってことにも気づいたんですよ、途中で(笑)。
本多:撮影の途中で?
工藤:そうなんです。本多くん来たときに、本多くんはすごいキャラが立つタイプなんだけど・・・なんか、違ったんですよ。最初の、工場のシーンの撮影あたりまで。
本多:ああ、工場っていうのは・・・撮影は飛び飛びで撮ってたからアレだけど、まあ、1週間あるとしたら、3日目くらいですよね、工場って。
工藤:そうそう。そんときに「あっ」って。「この人、三郎くんに本気で、なろうとしてない」って思った瞬間があったんですよ。
本多:ええ(笑)! 僕!? ほんとに!?
工藤:それが、撮影してるときに「これって、編集でカットする部分ですよね?」って言ったんですよ、本多くんが。
本多:僕が? 僕、そんなん言ったんですか?
工藤:そう。
本多:ほんまに!? そんなん言った覚えないですけどねぇ・・・。
工藤:それでブチ切れて。「ふざけんなよ」と。
本多:まじで!! わあードキドキしてきた。
工藤:(笑)。「編集で」って、「おまえが編集のこと考えんな」と。
本多:そら、そうですよ! それは、ブチ切れると思いますよ。それで、ブチ切れて?
工藤:ブチ切れて、もう本多くんと話せなくなったんですよ(笑)。
本多:まじで! 僕、ぜんぜん知らんかった!! ええー。でも、そう言われたらなんか、途中から、なんかあんまり話さなくなったような・・・。
工藤:そうそう。
本多:でもね、僕自身の特性として、あんまり監督の人と、撮影現場でコミュニケーションをうまいこと取れないっていうか。何しゃべっていいか。分からんくなるっていうのは、あるんですよね。
工藤:はい、はい。それは、何が原因だったのか分からないんですけど、それで私はもう、ほんとに「あ、この人は私を低レベルで見てるのかもしれない」って。とにかく、その発言にイラっときて(笑)。
本多:イラっときたんだー。えー・・・。

工藤:でも、それですごい追いつめたじゃないですか? みんなで、追いつめる方向にもって行ったんですよ。
本多:え! みんなに言ったん? それ。
工藤:うん。
本多:みんなに言ったん!! うわー、ちょっと(笑)! え、ほんまの話?
工藤:うん。私も、味方がなくなっちゃうから、みんなに「ふざけんなよ、あいつ」って。
本多:え、うわ、まじで。うわもう、泣きそうになってきたー・・・。えぇぇ〜。ほんとに?

工藤:(笑)。たぶんもう、とまらなかったから、そんときは。
本多:え、じゃあもう最後まで「ふざけんなよ、こいつ」っていう状態やったんですか?
工藤:ううん、違うよ違うよ。結果やっぱり、この前の5月にあった上映会のときに、「三郎くん、いいね」って言ってましたからね。だから、追いつめた結果、ちゃんと出してきたよね、って。
本多:そうですか・・・ちょっと、次のお酒にいっていいですか? ちょっと僕、このままじゃ話聞けないです。この状態で。もう、聞きたいことが、山ほどあって。
工藤:はい(笑)。
本多:じゃあ、ちょっと、次なに飲みます?
工藤:えっと、ビール(笑)。
本多:ビールね(笑)。ビール、なに飲みます?
工藤:「ガッツ石松」とかありますよ。
本多:なにこれー。わけ分からんわー。じゃあ、僕「坂本竜馬」。
工藤:じゃあ、「カンナビア」。
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