[ヨーロッパスタジオ]>[本多、すべてのバーで]


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筧:まあだから『かわい子くん』で、本多くんを選んだ理由は、「筧Googleに引っかかった」ってことでいいんじゃないの? 題名は「筧Googleに引っかかった」で。
本多:監督やから、そこまで考えて喋るんや。ウザ(笑)! そんな、題名とかはこっちでやりますから(笑)。
筧:演出を考えて(笑)。でも、工藤さんも、そういうのなかった? 「感性だけでは、映画はとれない」って。
本多:言ってた言ってた。
筧:うちらってさ、「スタッフィング」も「キャスティング」も、やたら計算するよね。いやらしいくらい、いろんな事を考えるよね。普通の人よりあきらかに、ほんとムカつくくらい思慮深いんじゃないかって最近思う。
本多:裏の裏まで考える?
筧:そう。裏の裏まで考える。職業病みたいなもので。もちろん俳優もそうだと思うし、たぶんクリエイターはみんなそうだと思うけどさぁ。もっと「他の仕事」をしてる人たちって、仕事は別として、プライベートのことまで深く考えない、というか、感性で生きてていいと思うんだよね。そのほうが気持ちいいし、楽しいから。もちろんタイプにもよるし、感性も大事なんだけど、僕らはすごく考えますね。
本多:それってね、昔は・・・それこそ自主映画を撮ってた時代は、もう、感性で生きてた?
筧:というよりも、最近になって、もうちょっと、考える割合が増えてきた感じかな。
本多:それは、なんていうんやろ・・・。僕の勝手な思い込みかも分かんないですけど、自主映画って、言ったら「自分たちの世界」で。
筧:まさに、そうですねー。
本多:でも、いまやられてる仕事とかって、他との関わりがあるから。
筧:そう。「初めまして」みたいな人を、たかだか1〜2ヶ月で自分たちのワールドに引き込んでって。それで、ヘタすると、理路整然と言わないと理解してくれないスタッフとかキャストとかもいるから。「そんなの雰囲気じゃなくて、0があって、1があって2があって、3があって4って、ちゃんと説明してくれ」って言うような、こっちがあんまり感性ばっかでいくと嫌がる人もいるから。だから結局、感性で「こうしてほしい」って思ってることとかも、一度理屈に置き換えて説明したりするってことある。だから、そういう職業病もありますね。
本多:でもけっこう、僕のイメージやと、筧さんてそいういう「理論」がけっこう好きな、「理系」な感じがすごいするんですけど。
筧:「理系」ではないんですよ。実は、ぜんぜん。
本多:あっ、そうなんですか?
筧:簡単に二分出来ることじゃないとは思うけど、どっちかといえば「感性の人」だと思う。最終的には。できれば「雰囲気」で、乗りきりたい。
本多:(笑)!
筧:ほんと、工藤さんが言ってたような、「雰囲気だけじゃダメだ」っていうことを、僕もどっかで感じたんだよ。たくさんの人を楽しませなきゃいけないっていうことは、なかなか感性だけではいけないんじゃないかな、みたいな。もちろん、パーセンテージとしては「感性」も残してますよ。でも、7対3くらいの割合かな。作品によって違うけど。

(お酒、到着)

本多:あ、じゃあ2杯目ー。乾杯ー。





本多:あのね、「カット」をかける瞬間っていうのは、そのときもやっぱり「考えて」るんですか? なんていうのかな、演技を見て「オッケー!」っていうときと「もう1回!」っていうときあるじゃないですか? それって、どんなことを「考えて」るんですか? それとも、もう直感で「オッケー!」って言ってしまう瞬間があったりするんですか?
筧:直感で言って、後悔したりとかするねぇ、やっぱり(笑)。
本多:後悔するんだ(笑)。
筧:カットかける瞬間ねぇ。でも、(演技を)見終わって、カットをかけるわけじゃないからね。見てる最中に「あっ、いったな」っていうのがあるんだよ。突破のラインが、ある。読み合わせでやって、課題になってたようなところを、じっさい現場でリハーサルでやってみて。だいたい方向は合ってるけど、微妙なニュアンスを直すよね。で、ずっとリハーサルやっている訳にも行かないから、まずテイク1やってみて。で、その中で「A地点、B地点、C地点」ってあったとして、それをそれぞれ「クリア」したら・・・。
本多:そうか、やっぱそうですよね。ちゃんと自分で図面をひいて、見てるってことですよね。
筧:ああ、まあ頭の中では見てるってことなかなー。でも、そこまでは理路整然と考えたことないから、分かんないけど・・・。完全にスイッチ入ってるからね、現場中って。ぜんぜん普段と違うもん。僕のなかでは、違う。
本多:そうそう! 
筧:他人から見ても、違う?
本多:そう今回ね、まず、ごはん食べてなかったでしょ?
筧:最近、やめました。ごはん食べるのは。
本多:食べるのを、やめた? なんで!?
筧:眠くなるから(笑)。
本多:ああ、そっか。寝れない。
筧:寝れないし、僕らはそんな体力仕事じゃないからね。昼食タイムが、たかだか1時間とか45分とかしかないんだったら、次の撮影のプランを考えたほうがいい。「本当にこのカット割りでいいんだろうか」とか「本当にこの、僕の考えてた演技プランでいいのだろうか」とか。なんだかんだ言って脚本は長い間書いてるけど、実際に現場に行くのって、あまり回数ないんですよ。「ロケハンで2回くらい行って、今日が3回目」とかなんで。「イスがあって机があって、この空間の広さがあって」ってことを、役者より先に、いちおう知ってないといけないから。俺が思ってた「ここで立って」とかが無理だったりする場合もあるから。だから、メシ食ってる時間がもったいないんですよ。
本多:でもね、今回撮影が3日間だったじゃないですか。僕も1回、断食3日間したことあるんですけど、2日目くらいで、ほぼ何も考えられないときがあったんですよ。
筧:いや、断食っていうか俺、家帰って食ったり、朝食ったりしてるから。
本多:あ! そっか! 現場で食べてないだけか!
筧:そうだよ(笑)。朝はちゃんと食ってるよ。パワーが出ないから。昼と晩を食べてないだけ。あと、差し入れも食べてた。シュークリームとか、甘いものは。
本多:なんや(笑)! 僕もう「筧さん、メシ食ってない!」みたいになってて。



筧:うん。「ごはん」をね、食べてない。「ごはん」を食べると眠くなるから。
本多:あ、なりますねぇ。そういうことか。そうか。「現場にいる間」は、食ってないってことか。
筧:そんなに、時間があるほうでもないしね。だから、その時間がもったいない、と。たいがい眠くなるんだよねー。
本多:メシ食ったら?
筧:うん。あとね、前日にどうしても次の日のことを考えて、睡眠不足になっちゃうから、それでただでさえヤバいのに、12時とかにメシ食うと緩慢になっちゃって。撮影中の3時とか4時とかにちょっと眠くなる瞬間があってね。それがよくないなー、と思って。
本多:でもね、そんだけ筧さんが身を削ってやってるのに、僕とかがリハーサルとかで、台本見ながらやったりもしてたと思うんですよ。ああいうのって、どう・・・?
筧:俺ね、ぜんぜん慣れてるっていうか、そういうことに対して、なんとも思わないんですよね。「本番さえよくやってくれれば、いいんじゃないの?」って。僕けっこうね、物理的なタイプなんですよ。監督って、2つのタイプに分かれるんですよ。
本多:え、どんな?
筧:演技に関して「ほんとにそう思ってる?」っていうタイプと「思ってなくても、ちゃんと絵に出てればいいよ」っていうタイプ。これはたぶんね、どんなベテラン監督でも、前者と後者、あると思う。
本多:でもそれってね、突きつめたら「そう映ってる」ってことは「そう思ってるだろう」ってことだから・・・。
筧:そうそう。そうなんだよ。だから、それでいいんですよ。「ぜんぜん悲しい気持ちになってなくても、悲しい表情をして、涙を流していて、それがレンズを通して見えたら、観客には「悲しい」っていうふうに見えるから、それだったらいいよ」っていうのは、わりと一理あるなと思ってて。でも監督の中には、それを見抜いて「今、ほんとうに悲しいと思ってねぇだろ」みたいなことを言う人もいる。
本多:ああー。
筧:これは、まあ難しい問題ですね。生涯のテーマかも。「形から入ったほうがいいのか、精神から入ったほうがいいのか、どっちなのか」って。
本多:うーん。精神から入ろうとするんですけど、でも、形も重要やし。いくら僕が悲しんでても・・・。顔が笑ってて悲しみが出てたらそれはものすごい、いいと思うんですけど、でもやっぱり「どう見えてるか」っていうのは、あるわけで。とくに映像とかだったら、全体じゃないじゃないですか。見えるのは「カメラが切りとってるところ」やし。
筧:そうそう。そうなんだよ。



本多:でね、僕最近すごい思ったことがあって。役者には「自分が今、どう撮られてるか」っていうのが分からなかったり、するわけじゃないですか? それはもう考えすにやればいいと思うんですけど、でも、監督としては「ズームで来てるときに、こう向いて」とか、効果的にやってほしい時とかあるじゃないですか? 役者としては、そういうのって、知らずにやったほうがいいんですか?
筧:ええっとねぇ・・・確かにそれは、すごい言えてて。・・・僕が何人かやった俳優さんで、ほんと「映像」が得意なんだなって思った人は、僕は何も言ってないのに、「自分とカメラとの距離」と「スタッフの動き」で、「どんな絵が撮られてるか」が、ちゃんと分かる。
本多:ええー!
筧:「割り(カット割りが書いてある台本)」も見てるかもよく分からないのに。まあ、割りは現場で変わることもあるし、「ズームイン」とか書いてあっても、現場で「やめます」みたいなこともあるし。でも、カット割りは基本的に、スタッフは知らなきゃいけないけど、キャストは、そこまで知る必要なかったりもするし、知らないでやってる人が多いんだけど、いい俳優さんって、そう。ちゃんと分かる。
本多:まじですかー!
筧:簡単に言えば、ここにカメラがあってさ、近くにあるのか、遠くにあるのかで、ぜんぜん撮られかた違うの分かるじゃないですか?
本多:はい。
筧:あと、問題は「レンズ」っていうのがあって。レンズが遠くても、望遠レンズだったら、背景がボケて、また違う感じにになるじゃないですか? カメラマンに「今ミリですか?」って聞く人もいる。
本多:「何ミリ」って?
筧:レンズのミリ数。これ(手元にある、デジカメを手に取り)だったら、「28」とか「35」とか書いてるじゃないですか? 要は、レンズの「何ミリ」っていうのが、小さければ小さいほど「ワイドレンズ」。
本多:「ワイド」っていうのは?
筧:「広い」ってこと。
本多:あ、「アップ」じゃなくて、「引いた」絵になるってことか。
筧:そうそう。カメラがけっこう遠くにあって、レンズが「28ミリ」とかだったら、絶対アップではない。全体を撮ってるわけだから。だけど、カメラが向こうにあるのに「90ミリ」とかだったりすると、けっこうアップで撮られてる可能性があるわけですよ。で、それをカメラマンに「今何ミリですか?」って、チラっと、監督に分からないように聞く人が、たまにいて。
本多:へえー!
筧:この1〜2年だと金城さんが、そうだった。金城さんはちょいちょい聞くんだ、カメラマンに。「今は何ミリですか?」って言って「今28ミリ」言われたら、「ああ、そうですか」って言って。で、そのときにカメラは近くにあるから「じゃあ、これくらいだ」って。遠くて、「今90ミリ」とか言われたら「じゃや、アップだな」って。それだったら、抑え気味に芝居して。逆に引きの場合だったら、ちょっとオーバーにやる。
本多:うわあー! えっ、そこまで考えて!?
筧:やりますよ。映像専門の人は、やるんですよ。やっぱ、それくらい。
本多:わあー。金城武さん。
筧:すごいっすよ。やっぱ。映画のキャリアが長いじゃないですか。だから「ミリ数云々」とかさ。あと他にも、「助手の人がレンズ交換してるのを見てる」とか「ズームをまわしてるか見てる」とかで、なんとなく「自分がどういう演技をもとめられてるか」っていうことが分かる人もいるし。
本多:すごい・・・。





筧:あと、たまに、ミリ数までは聞かなくても、「監督、ここはどうやって撮ります?」みたいなことを聞く人はいるよ。そうすると「ここは、アップです」って教えてあげたりとか。確かに僕らは、聞かれなかったら、あんまり言わないからね。
本多:けど僕らは、そういうのを聞いていいかどうか、分かんないじゃないですか。
筧:聞いていいと思うけどね。ただ、まあ分かると思うけど、撮影って同じシーンを繰り返すじゃん。角度によって違うから。「次はここ広めに撮ります」で、あるときは「アップで撮ります」って、あるときは「移動して撮ります」とかあるから、一概には言えないんだよ。
本多:そうそう、それで、同じシーンをいろんな角度から撮って、どこが使われるか、分かんないわけじゃないですか。
筧:簡単に言えば、「1回目は広い絵で撮ります」っていうのだったら・・・まあでもそれは、監督が言うことなんだよね。「この絵は広いから、ちょっとオーバーにやって下さい」とか言うことであって。たぶん、本人がそんなに、必要以上に気にしなくていいんだと思う。
本多:そっか。だから、撮影やってて信じるべきところは「監督がオッケーって言ったら、オッケーなんだな」っていう。
筧:ほんと、そう。ベテランの人になればなるほど、アイデア持ってるからいろいろ言うんだけど、けっきょく最後は「どういう風にやってもいいよ」って必ず言う。「どう使われるか分かんないし、どう編集されるか知らないから、そんなことを気にしてるほうが逆におかしい」くらいのことを言う人もいるね。すごい、委ねてくれる人が多い。映像専門の人は。
本多:そのね、「アイデアを言う」っていうのは「こういう演技はどう?」とかっていうことを、口で言われるんですか?
筧:うん、あと「動き」とか。
本多:ああ、なるほどねー。
筧:たとえば「麻生さんと本多くんが話をしていて、ここで立ちます」って言うじゃん。でも「ちょっとここは、セリフ的に立てないな」みたいなことを言うとか。あとは「このへんで向こうに行くのどうですか?」って言ったら「このキャラクターけっこう破天荒なヤツだから、たとえば、ここで向こうに行かないで、ここで割りこんで、こっちに行っちゃうとかどう?」とか言ったり。まあ、それは金城さんもそうなんだけど。そういうこと言うくらいの人もいる。その場合、カメラワークから何から、ぜんぶ把握してるけどね。
本多:それって、リハーサルのときに言うんですか?
筧:そうそう。リハーサルのときに。そういう、カメラマンとかみんながいる前で言わないと、即反映されないから。だから僕らは、そう言われても大丈夫なように「2の手・3の手・4の手」って、考えておくんですよ。僕らが披露してるのは「1の手」で、それで「大丈夫ですか?」って、役者さんにいちおう聞いて。生理的なものって、あるじゃないですか?
本多:そこって、やっぱ大事にすべきところなんですか?
筧:そこは、めちゃめちゃ大事にしてますね。
本多:僕らも、それっていうのは大事にしたほうがいいんですかね?
筧:大事にしてほしい。大事にしたほうがいいですよ。「監督が言ってるから、やる」っていうんじゃなくて。撮影始まってから、「テイク2がいいのか、テイク3がいいのか」ていう最後の判断は関しては、委ねてもいいと思うんだけど。「絶対テイク2使ってくださいね」とかは、言えないじゃないですか(笑)。撮られたものに関しては、もうしょうがないんだけど、リハーサルは「カット割り云々」っていうよりも、まだ「お芝居を作る時間」だから、アイデア出してもいいと思う。



筧:あとは「小道具を使う」とか。そこにたまたまタバコがあったら「ここで、タバコ吸っていいですか?」とか。
本多:あ、僕ね、『かわい子くん』でね、一個言ったんですよ。マンガ喫茶のシーンで、僕が「理子」を、自分が知ってる「理子」っていう人だって知らずに「キレイやなー」って見てて、「理子だ」って気づくっていうシーンあるじゃないですか。で、そのシーンのときに、僕が「ごまかそうとして、ドリンクバーのジュースを飲むっていうのはどうですか?」みたいなことを言ったら、筧さんが「いいんじゃない?」言ってくれて、それをやったんですけど。でも途中から「このジュース、なみなみと注がれてるから、これを飲むっていうのはちょっと、どうなんかな」って思って。で、映像で見ても「こいつ・・・」って思ったんですけど。
筧:(笑)。いや、でも切りかえるためには、よかったんじゃないの? 「冷静でいようとする」というか。ほら、人間ってパターンじゃないから、意外とそういう時ぜんぜん関係ないことやっちゃったりすじゃないですか。まあまあ、悪くないんじゃないかな。あれはでも、かわいいっすよ、なんか。飲もうと思ったのに「ああぁ、多い」みたいな。
本多:そうそう(笑)。だから、あんま飲めてないんですよね。
筧:でも、「間」が埋まらないっていうのは、嫌だったりしない? 役者さんって。
本多:ああー、ある。
筧:妙な「間」。必要な「間」じゃなくて。それは結構みんな言うよね。「間が埋まらないから、何かやっていいですか?」とか「手持ち無沙汰だから、何かやっていいですか?」とか。それはまあ、気持ちは分かります。それでね、それこそ『Sweet Rain 死神の精度』のときの美術監督の人が言ってたのが、美術は「映像に映るからこういうのを用意しとく」とか「これを用意してほしいと監督に言われたから用意する」というのじゃなくて、究極を言うと、「俳優に何かのときに手にとってほしいな」っていうことで、用意したりするんだ、って。
本多:へえー!
筧:だからべつに、ホンに書いてあるものだけを用意するんじゃなくて。たとえばここで、「グラスに入ってる、お酒を飲む」ってト書きに書いてあったら、グラスを用意するのは当たり前じゃないですか? そうじゃなくて、念のためタバコも用意しておく、とか。「念のため、色んなものを用意しておく」っていうのがある、って。あと、たとえば「ライター」って言っても、「ジッポ」にすることによって、「役者さんにカチャカチャ(フタを開け閉め)やってもらう」ていう。ベテランの美術はそこまで考えて用意する、って言ってたよ。「絵に映るから」じゃなくて。それは、ある種の「賭け」なの。賭けっていうか、「遊んでる」んだって。自分たちが用意したものを使うかな、って。
本多:どう、料理するか!? 
筧:そうそう。
本多:ああー!
筧:だから、けっこう美術監督の人は見てて「あの役者はデキるな」とか「あの役者はダメだな」とか、思ってるらしい。
本多:うわ! 怖!
筧:美術の人と喋ることって、あんまりないじゃない? でも、向こうは見てるらしいよ。
本多:うわあー。「お疲れさまです」しか言ってないですよ(笑)。そっかー。
筧:そこまで考えてやるのが、映画とかドラマの美術担当ですよね。
本多:へえー。じゃあ、リハーサルで何か小道具があったらそれを。まあ、無理やり使うっていうのも、また違うやろうけど・・・。
筧:たぶんね、それはガッツポーズしてると思うよ。「監督に言われてないのに用意したもの」を使ってくれたときとかに、遠くから見てる美術監督は「しめしめ」と思ってると思うよ(笑)。
本多:まじですか。わあー。次から、何かあったら使うようにしよ。



筧:一番感動したのは、「死神の精度」のときに、最後の話で理容室が出てくるじゃないですか? あれで、レジがあるんだけど、「レジで何かする」ってことは、台本にまったく書いてないわけですよ。いちおうレジが映るから、外見として「レジ」と「机」と、「念のための電卓」とかがある、それくらいまでは、考えるじゃないですか。で、僕が現場に入って、なんかちょっと手持ち無沙汰のときに、なんとなく、レジが置いてある机のひきだしを開けたら、その中に「領収書」とかいっぱい「輪ゴム」とか「ピン」とか、絶対映らないのに、入れてあるんですよ。それはね、なんでやるのかっていうと、僕とか役者が現場に入って、何気なくひきだしの中を見たときに、「がらんどうで、何も入ってない」のと「入ってる」とでは、そこにいる店員になりきれる気持ちが違うからだ、って言ってて。それを聞いて僕、泣きそうになったの。
本多:・・・わあー、いま僕、泣きそうですもんー。
筧:それが、大事なんだって。
本多:すごい、いろんなもののうえで、成り立ってるわけですもんね。
筧:「見えないところ」にこそ、逆に力をかける、みたいなところあるよね。もちろん、全部が全部じゃないよ。100用意したものを、100映してる作品もあれば、1,000くらい用意したものを100映してる作品もあるってことで。でも絶対そのほうが、いい映像になってるし、役者さんも、いい芝居ができてるんだっていうことを、信じて。すごく、「美しい考え方」かも分かんないですけど。「きれいごと」かも分かんないですけど、そういう感じの発想って、あるんですよ、みんな。
本多:でも、すごいそれって、幸せな現場ですよね。
筧:うん。「無駄をできる」ってことだからね。「お金がないから、引きだしの中なんて映るか分からないのに入れらんねぇや」っていうことじゃないからね。でも、すごいうれしいでしょ? 役者としては。
本多:嬉しいけど、でも、この話聞いてしまったから、次から「あ、試されてる!」っていうふうに、なってしまいますけどねぇ(笑)。
筧:(笑)! でも遊び心って、いいよね。逆に言うと、それをやることで、映してくれるかもしれないっていうのもあるじゃないですか。
本多:監督も、試されたりする。まあ、試されてるっていうか。
筧:うん、とにかく空間をつくることっていうか、世界観をつくることが大事で。「どう撮りますか?」じゃないんだよ。どう撮るかとか、どう動くかなんて、現場で始まってみないと分かんないし。まあ僕、いろいろやってるけど、特に映画はそうだね。テレビとかCMとかだと、なかなかそうはいかないけど。
本多:それは、何? 時間?
筧:時間と、あとやっぱ1カットに対してのお金が、映画にはあるし、映画畑の人の作品に対する思慮深さというのはあると思う。
本多:ああー。でもほんと、台本読んで、リハーサルとかやってみて、「じゃあこういうふうにやるぞ」とか「相手の人がこういう感じやし、筧さんがこう言ってたから、こうやろう」とかイメージしてきても、現場で自分のイメージとぜったい一致しないことが、いっぱいあるから。
筧:そうだねぇ。ロケーション自体は、本番の日に、入るわけだからね。
本多:でも、「その環境を、どれだけ楽しめるかなんやろうな」と。そう思えるように、最近ようやくなってきました。今までは、「そのギャップをどうやって埋めようか」とか、そういうのやったんですけど。
筧:うん。映像は、反射神経の世界だよね。本番は一瞬しかないもんね。終わったら、次から次に、どんどん行っちゃうから。もう、巻き戻せないからね。
本多:あれは、どうなんですか? 役者の人が「もう1回お願いします!」って言うのは。
筧:言ったら、絶対もう1回やるよ。どんなにアレでも。
本多:「自分がいいと思ってても」ですか?
筧:うん。まあ、極力やる。
本多:まあ、どれを使うかっていうのは、あとで冷静になって。
筧:うん、あとで考えるけど。いちおうねぇ、ドラマはやっぱキャラクターというか、人物が一番大事だから。それは、ありますね。



本多:次じゃあ、何飲みますか?
筧:ええー? なんか、宴もたけなわになってきましたね。
本多:いやいや、まだ・・・半分くらいですよ(笑)。
筧:じゃあ「ウイスキーソーダ割り」いっときますか?
本多:わあー、いきます。
筧:「角」の。
本多:「角」? 「ニッカ」と「角」なら、やっぱ「角」?
筧:いや、どっちでもいいけどね(笑)。
本多:(笑)。じゃあ、角のソーダ割り2つください。
店員:はい。