[ヨーロッパスタジオ]>[本多、すべてのバーで]


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水沼:なんかでもさ、創造って、そういうもんじゃないかな、って思うんですよ。「予期せぬ発見」というかさ。「インプットした記憶のないものが、アウトプットされる」というものが、「創造」なんじゃないかな、と。だからその・・・表現悪いけど「食べた覚えのないウンコが出る」みたいな。
本多:ああー・・・なるほど。
水沼:なんか食べないとウンコ出ないでしょ? なのに、「こんなもの食べたかなぁ?」みたいな、ウンコが出る。これが、創造の楽しみじゃないかな、と僕は思うんだけど。
本多:ああー、なるほど。
水沼:たとえばさっきの演出の話だと、僕は竹内さんのようなやりかたをやろうと思ってたわけですよ。だからそれでいくと、「見たことあるウンコ」が出たはすなんですよ。でも、結局のところ、「食べたかどうか分かんないものが、ウンコとして出てきた」っていう。そういう・・・ウンコ冥利につきる(笑)。
本多:ウンコ冥利(笑)。・・・いや、いい話なんですけどね。とても、いい話なんですけどね。なんですかね、この空気は。でも、なんか分かります、その感じは。
水沼:まあ・・・そのへんの表現は、載せるときに変えてもらったらいいけど。
本多:それは、そのまま載せますよ(笑)。
水沼:(笑)。でも、だから逆に松田正隆さんがよく分からないものを書いてきてくれたことに、感謝してますね。
本多:それね、そのときは、2人芝居だったんですよね? じゃあ、水沼さんと、金替さんと内田さんの3人で。
水沼:そうそう。しかも、ほとんど台本が遅れてて。だから稽古の前半なんか3人でやることないし。それで、稽古場にテレビがあってちょうど長野オリンピックやってたんで3人で見たりして。
本多:でも、そこで3人でいろんなことを喋ったりしたんですよね? それがね、また。
水沼:そう、喋ったりして。僕、内田淳子さんとは、初めてだったんですよ。同い年だし、同じ大学だから、知ってはいたんですけど。内田さん、性格ハッキリした人じゃないですか。だから「大丈夫なのか?」っていうオーラだすごい出てて。
本多:その、プレッシャーが。
水沼:そう。僕、初演出だし。

    (お酒到着、乾杯する2人)

水沼:じゃあ、2杯目〜。
本多:うぃーす。





水沼:じゃあ、本多くんの質問を聞こうか?
本多:なんでそんな急にキャラが変わるんですか(笑)。でもね、それでそういう風に3人で「羊団」(※1)やられてて。そのときって、松田さんの戯曲を水沼さんが演出して、内田さんと金替さんが演るという形をすっとやられたんですよね。で、そのあとに自分で「壁ノ花団」を立ちあげるわけじゃないですか? それって、自分が台本を書くことがしたくて、なんですか? あ、でも羊団のときも、書いてたんですよね?
水沼:うん。でも、「書くこと」にはまだそんなに・・・自分の本分ではないな、っていうような気は。まあ、今もそんなこだわってない。
本多:こだわってない、
水沼:こだわってないし、何ならもう書きたくない、と(笑)。
本多:書きたくない・・・。それは、言っちゃっていいんですか(笑)?
水沼:言っちゃっていいですよ、べつに。バーなんで。バーでの話なんで。
本多:ああ、バーのね(笑)。でも演出は、したい?
水沼:演出は、したい。演出するためのユニットなんで。だからべつに、羊団を続けてもよかったんですけど。
本多:羊団はもう、なくなったんですか?
水沼:実質・・・うん、まあ。ないと思うけどな。
本多:僕、ひつじ年だから羊団入れるな、っていう風に思ってたんですけど。
水沼:なんなら、本多くんが羊団つくればいい。
本多:いやもう羊団は、あるじゃないですか(笑)。
水沼:いや、それに似たようなものをね(笑)。本多くんは、そういうのないの?
本多:ねぇ。僕、演出もやったことないし。作家も。
水沼:興味はないの?
本多:あったんですけど。学生時代に、1回やりたいなーと思って、台本書いたんですよ。で、学生時代ってね、みんなで台本持ち寄って、「どの台本が一番いいか」みたいな話するじゃないですか。そのときに圧倒的な差で負けて。それ以来、もうやらないですね。

(※1)1998年結成。内田淳子、金替康博、水沼健の3人によるユニット。2004年まで断続的に活動し、松田正隆の新作を中心にこれまで4作品を上演した。


水沼:もう、「書きたい」っていう気持ちはないの?
本多:「書きたい」は、ないですけど・・・。
水沼:「自分の芝居をつくりたい」っていうのは?
本多:そういうのは、ちょっとあるかも分かんないけど。なかなか・・・。楽しいですか?
水沼:楽しいです。楽しいけど、まあ、体力もいるしねぇ。そういう「流れ」に恵まれないと。そういう機会は巡ってこないよね。
本多:そうそう、今、ヨーロッパ企画の永野さんが、今度初めて舞台の作・演出をやるんですよ。で、今まで「役者」って・・・そういう舞台美術のこととかって、演出の人と、スタッフの人が話し合ってやったりしてたけど、今回、作・演出をやるにあたって、タイトルから何からそういうことも全部永野さんが自分で決めていかなきゃいけないっていう、そういう状況になってて。それで永野さん、ものすごい今活性化されてるんですよね。もうその、「追い詰められてる感」も、あって。
水沼:永野くんは、「ヨーロッパ企画」でやるの?
本多:いや、なるみさんっていう、吉本の芸人さんの舞台なんですよ。
水沼:おおー。すごいな。
本多:すごいんですよ。デビュー作がそれなんですよ。
水沼:そうだよね。でも永野くん、なんか映画の脚本で賞を取ったんだよね?
本多:そうなんですよ。「デジタルショートアワード」ていう、10分間の映画を集めた映画祭で、グランプリをとって。
水沼:いやぁ、でもデビューからそういう、しつらえを用意されてるのは、幸せだろうけどちょっと本人的には、大変だろうね。
本多:プレッシャーが? 
水沼:そうそう。「自分がやりたいこと」ていうのを見つけるのには、わりと時間とか、体力的にも余裕がないと、なかなか見つからないから。
本多:そっかー。
水沼:そういう意味では、けっこう器がでっかいとこだと、それよりもこう、やらないといけない、ということが先行しちゃって・・・どうしても余裕が持てないから。たいへんだと思うけどねぇ。
本多:でもむっちゃ今永野さん、目がキラッキラしてますけどねぇ。
水沼:あ、そっか。そういう人なら、いいんじゃないかな(笑)。
本多:追い込まれたらもう。ストイックな人なんで。それを楽しむ・・・楽しめてるか、分かんないですけど。僕から見たら、キラッキラしてるんです。





本多:そのね、演出をやられて、そのあと役者だけのときもあるじゃないですか? それって、自分の意識は変わりました?
水沼:ああ、もちろんその、変わりますけどね。・・・まあちょっと、そこは難しいところではあるかな、と。やっぱその、現場によって要求されることって違うじゃない?
本多:はい。
水沼:演出をやると、自分の演劇観っていうのは、わりとしっかり組みあがってはいくんだけど、それを他の現場でそのまま持ち込めるかっていうと、そうでもないことのほうが多いから。だから、そういう意味では、まあ・・・難しいところは多いかな、と思いますね。もちろんMONOなんかは、僕はもう20年やってるから、土田さんが要求してることは、だいたい分かるし、対応はできると思っているんだけど。現場によって、いろいろありますからね。
本多:そっか、「役者」としては、求められたことを。
水沼:うん。役者としてはもちろん、現場で要求されてることをやるっていうのが本分じゃないですか? だから、演出をやってることで、視野が広がることろもあるし、逆に重荷になるときもあるし。
本多:「重荷」っていうのは?
水沼:「自分は、こうやりたい」とか「俳優とは、こうだろう」っていうようなものが、演出をやると、わりと客観的に見るから。「俳優の作業」っていうのを。でも、そこで積みあがっていくものって、そのままよそに流用できづらいとこがあって。そこで、その「すり合わせ」が難しくなるっていう。俳優だけやってたら発生しなかった作業が生まれる、みたいな。
本多:ああー。なんとなく、なんとなくイメージできるような感じがします。僕はやっぱ演出をやったことがないから、そこまでは、分かんないですけど。でもそういう苦労は、人の「俳優の作業」を見ることによって、自分の今までやってた作業に対して客観的になって、よりクリアになるわけですよね?
水沼:そうですよね。まあでも「演出」っていう、違う視点で演劇にかかわると、視点が新しく生まれるし、「観点」が・・・「見るところ」が増えていくから。「チェックポイント」みたいな。だから、そういう意味では、俳優の作業としては、豊かになったなぁ、とは思う。そういう面は、確実にあると、思いますよ。
本多:そうっすよねぇ。そう、思います。なんか。





本多:じゃあ逆にね、土田さんが台本を書かれてるときに、水沼さんが手伝ったり、とかっていうのはないんですか?
水沼:ないですね。
本多:相談に乗ったりとかも、別に・・・?
水沼:なんか聞かれたら答える、かな。そもそも僕は、自分でやってるときに、人に意見言われるのイヤなんで(笑)。
本多:ああ、なるほどね(笑)。
水沼:だから、たぶん他の人もそうなんじゃないかなぁと思うし。なので、あんまり言わないですけど。でも土田さんはたぶん、そういうタイプじゃなくて、「意見を言ってほしいひと」なんだろうけど。まあ基本的に、聞かれたら答えようかな、と。・・・まあでも、ときどき言うかな。
本多:同級生ですよね?
水沼:いや、1コ上なの。先輩なの。
本多:あ、土田さんが先輩。そうなんですか。
水沼:僕と同級生なのは、金替さんと、奥村泰彦さん。金替さんは、学生時代は2つ下だったけど。
本多:そういうの、大学ではよくありますよね。
水沼:だから、いまだに「さん」づけで呼ばれるんだけど(笑)。「誕生日的には、おまえのほうが先だろ」みたいな。ヨーロッパは、そういうのないの? 「学年は下なんだけど、年は上」みたいな、そういうので「呼び名がそのまま変わってない」とか、ない?
本多:それはねぇ・・・大学のときにはそこまで年齢のズレはなかったんですけど、5年目くらいのときに、1回オーディションみたいなのがあって。それで年上の人がごっそり入ってきたんで、それがなんか微妙な感じでしたけど(笑)。まあそれはもう「○○さん」みたいな感じで、今は。
水沼:ああー。うちだと、尾方宣久 とかさ。あいつ、俺らより5つくらい下なんだよ。かわいそうだと思うんだけど、そういう関係性って変わらないじゃん。今後も変わらないと思うし(笑)。俺らが55歳のときに、尾方が50歳で、よそから見たら「おまえら、年一緒やろ」っていうのだけど、僕らの関係は変わらないっていう。
本多:そう、そう!
水沼:「かわいそうだなぁ」と思って(笑)。



本多:なんか昔、大人になったら・・・30歳とか40歳とか越えたら5歳くらいの差は、なくなるものだと思ってたけど、ぜんぜんなくならないですよね、やっぱ。
水沼:なくならない、というか、若いころに決定した関係性っていうのは、逆転できないよね。そういうポイントも、機会もないからね。
本多:ないですよね。まあ、逆転したいとも、思わないですしね(笑)。
水沼:まあ、尾方がどう思ってるかは、分からないけど(笑)。かわいそうだなぁとは、思うけど。「50歳になっても年下役かい!」みたいな。
本多:まあでもそれは、貴重なポジションやから、いいんじゃないですか?
水沼:ああ、そっか。でも、本多くんもそうなんじゃないの? ヨーロッパ的には。
本多:いやいや、僕ホントまんなかくらいなんですよ。
水沼:ああ、そっか。
本多:下に、酒井とかいて。・・・あっでも僕、下といえば、下でした。年下って男性では酒井くらいしかいなかった。
水沼:そっか(笑)。いやぁでも、あれだよね。関係が変わらないっていうのは地獄だよね。
本多:「地獄」ですか!?
水沼:下の者にとっては。
本多:いやいや、ぜんぜん・・・。
水沼:地獄でも、ないか。
本多:地獄じゃないですよ。ぜんぜん、年下キャラで楽やったりしますもん。
水沼:ああ、そうやな(笑)。
本多:それは・・・「地獄のような扱い」をしてるからじゃないですか(笑)?
水沼:ちょっと待って! 僕、地獄のような扱いしてた?
本多:いやいや! 僕はされてないですけど!
水沼:尾方にしてた?
本多:いやいや、それもないですけど! でも、そう思うっていうのは、どこかでそういう風なことをしてるっていうことですよ(笑)。
水沼:そっか、そうだわ。ちょっと言いすぎだった。べつにそんな、「地獄」だとか、思ったことなかった(笑)。





本多:あと水沼さん、大学で教えたりもしてるじゃないですか? それは、なんというか・・・「演劇」を教えるわけですよね。学校の発表公演で、水沼さんが演出をされたりもしてると思うんですけど・・・。でも、演出をするだけじゃなくて、授業っていうのもあるんですよね?
水沼:そう。授業もするんですけどね。・・・本多くんは、どう思う? 「自分に、教えることがあるのか」という。それを、問われたときに、どう思う?
本多:いやぁ・・・。・・・色んなひとから聞いた話をぜんぶ伝える、くらいですよね・・・。自分のは・・・。
水沼:いや、そうだよね。最近そういう、大学で演劇を教えるっていうとこは多いと思うんですけど、もともと、その教える側の先生方も「我流」じゃん? 誰も、「習って」ない。
本多:ああー、はいはい。
水沼:「演劇」なんてのは、「我流」しかないじゃない? とくに、日本なんてのはさ。まあ、欧米とかはね、そういうシステムが、はっきりあるけども。でも、そういうシステムが日本の風土に根付くかと言われれば、あんまり根付くとも思えないし。まあ、日本の小劇場なんてのも、我流でしかないと思うし。だから結局「教えることってあるのか」っていうと、ないじゃん。まあ結局、「演劇を続けるなら自分で考えろ」っていうようなことを、感じてくれればいいんじゃないかぁ、と。ただ・・・僕は2年教えてて、今は3年目なんですけど、まあたいていみんな卒業して就職するんで、あんまり演劇は続かないんですよ。卒業後も演劇続ける人が、いない。だから、そのへんが忸怩たるものが、あるんですけど。「何を、教えてるのか」と。
本多:うーん・・・。
水沼:社会に出て、何にも役に立たないような演劇を4年間学んで、しかも、卒業したあと演劇をやらないんだとしたら、おまえらは何をしに来てるんだ、と。
本多:えー、でもそれは、そこで学んだことが、活かされたり・・・するんですかねぇ? ・・・でも僕大学のとき、学生サークルの座長やったんで、就職活動したときに、自己PR欄に「座長をやってました」みたいな、「そこで、色んなことを学びました」みたいなことをむっちゃ書いてたんですけど、全部落とされて(笑)。
水沼:本多くん、就職活動してたの(笑)?
本多:してましたよ! バリバリしてましたよ!!
水沼:じゃあ何、演劇を続ける気はなかったの?
本多:いや、とりあえず1年は働こうと思ってたんですよ。何か知らんけど。
水沼:で、結局働いてないの?
本多:それはね、あのね・・・「むっちゃ採用して、でも仕事が厳しいからドンドン辞めていく」みたいな企業の最終試験までいって、「まあ、じゃあここで1年働こうかなー」ってもう受かった気でいてたんですよ。いっぱい採用するっていう噂を聞いてたから。そしたら、不採用の通知が来て。
水沼:(笑)! 
本多:「そこですら落ちた俺は、もう無理やろ!」と思って、みんなも演劇続けてたし、もうそれで就職は・・・(笑)。



水沼:そろそろ3杯目を。
本多:じゃあ、おかみを呼んで注文を・・・。
水沼:「おかみ」に(笑)。
本多:「マスター」じゃなくて、「おかみ」な感じですもんね。
水沼:「おかみ」って言うよりは、ちょっと若いけどね。
本多:若いですけど、格好がね。たすき掛けですもんね。
水沼:緊急事態やもんな。
本多:大奥のね。
水沼:竹ぼうきとか、持たせたいよね。
本多:竹ぼうきか・・・なぎなた。
水沼:(笑)!
本多:でもすごいなぁ。ここ、ギャラリーも併設されてるんですよねー。

    (こちらに気づく、おかみ)

水沼:あっ、すみません注文を。
おかみ:はい。
水沼:僕は、さっきの同じものを。日本酒をグラスで。
本多:あ、同じですか。
水沼:あっ、違うほうがいい? でも、いろいろ飲むと明日がツライですからね。
おかみ:(笑)。
水沼:まあ、でも焼酎ならいいか。おすすめは何ですか?
おかみ:おすすめは・・・やっぱり、芋焼酎。あと、梅酒ですね。
水沼:じゃあ、焼酎にしよう。宝山。富乃宝山を、水割りで。
本多:じゃあ、僕も。
おかみ:はい。