本多:2杯目、乾杯。
本多:じゃあ、「コラムニスト」が、幹となる職業?
しまお:うーん。何なんですかね? あんまよく分かんないけど。
本多:初めは「マンガ」からでしょう? 文章書くのは好きやったんですか? 昔から。
しまお:ううん、ぜんぜん。
本多:でもむっちゃ文章うまいじゃないですか。うまいっていうか、しまおさんにしか書けない文章の感じなんかなぁ。
しまお:でも、作文とかすごい下手くそだった。読書感想文とかも、何書いていいかぜんぜん分かんなくて、ふつうのことしか書けなかった。
本多:「ふつうのこと」っていうのは、当たりさわりのないこと?
しまお:うん。「何とかが、こうしました。ああしました。よかったです。面白かったです」って。
本多:あの「まほちゃんの家」は、どうやって書いたんですか? あれってね、子供のころのことからずっと書いてるじゃないですか? それって、覚えてて? それか、日記とか書いてたんですか?
しまお:記憶で。もう、ずっと昔から「こういうことあったな」って、よく思い出してたことを書いただけ。
本多:へえー。あの本のなかでね、おばあさんが亡くなられたときに、「下北沢で演劇を観た」って・・・。あれ、ヨーロッパ企画のことですよね?
しまお:そうそうそう! いちばん初めて、ヨーロッパを観たときじゃないかなぁ。ヨーロッパ観て帰ったら、おばあちゃんが死んじゃった。・・・「不吉」じゃ、ないけどね(笑)。
本多:そっか。そのときたぶん僕、夜しまおさんにメールとかしてましたよ。時期的にたぶん、観にきてくれてたときやなと思って、「あっ」と思いましたよ。
本多:あんまり自分の書いた本の話とかされるの、好きじゃないですか?
しまお:そんなことないよ。
本多:ほんとに?
しまお:演劇の話はどうですか?
本多:演劇の話は好きですよ。
しまお:そうなんだよねー。演劇の人とか、映画の人ってさ、すんごい演劇と映画の話したがるよねぇ。
本多:する。したがる。
しまお:ねぇ。前もさぁ、知りあいの男のひとたちと、友達の10人づつくらいで飲んだんですよ。男女で。まあ、合コンとは言わないけど・・・。
本多:合コンとは言わないけど(笑)。
しまお:合コンと呼ぶには、内輪すぎるけど。
本多:「軽知り合い」みたいな。
しまお:そう、軽知りあい、みたいな人をいっぱい呼んで。私は女の子だけ呼んで、漫画家の人が男の子だけ呼んで、飲み会やったんだけど、その中に映画関係者がいたのね。
本多:役者ですか?
しまお:いや、映画監督とかの、映画関係者のひとが何人かいて。もうその人たち、ぜんっぜん女の子と絡もうとしないで、映画の話ばっかりしてんの。
本多:その「映画関係者」同士で?
しまお:そうそう。まあ、いいんだけど。でも、女子はさ「あの人の演技がどうの」とか言われても「ポカーン」じゃん?
本多:なんで、来たんですかね。
しまお:でもね、いつもね「演技がどうの」とか「あの作品観ましたか」とか、そういう話してるイメージ。
本多:でも、するー。しますね。
しまお:ねぇ。でも別にそれが悪いわけじゃないけど。演劇の人とか、映画の人って、仕事を離れた場所でもしょっちゅう自分の職業について考えてるのかなぁと思って。それは「突きつめたい」から? 「語り合いたい」から?
本多:「共感したい」かな? 「あの人いいよねー」みたいな。自分が思ってて、相手も思ってたら嬉しいっていう・・・。でも、そういうことでもないんかなぁ。
本多:え、作家同士は、そういうのしないですか?
しまお:ええー、しないですよ。私、べつにそんな「作家」じゃないですけど。
本多:作家ですよ(笑)。どんな話するんですか? 世間話?
しまお:うわさ話(笑)。・・・ああっ、玉置浩二と石原真理子が結婚宣言したでしょ?
本多:はい。
しまお:・・・そういう、話。
本多:あ、そういう話。ワイドショー的な(笑)。
しまお:「あの人とあの人が付き合ってるんだってー!」とか。
本多:あ、でも僕らもそういう話しますよ。「小劇場ゴシップ」みたいなんを、スタッフの人に聞いたりして。「ええー、あの人があの人とー!?」みたいなんとか。
しまお:ああー。でも演劇って、色恋沙汰のイメージもあるわ
本多:まあ、せまくて濃い世界ですからね。そういうのって、なんで面白いんですかねぇ。ゴシップ。
しまお:ねぇ! そういうので、「満たされる」わけじゃないけど、すごいワクワクするのって、すごい下世話だよね。あとですごい反省するもん。あんまり、噂しすぎると。
本多:ああー。でも、たぶん何歳になっても、これは治らないでしょう。それとも、興味なくなっていくんかな?
しまお:でもさ、女の人とかはそういう話好きだけど、男の人とかは「もういいじゃん、ひとの話は」って言う人もいるから・・・。「おまえら、うわさ話好きだな」とかさ。
本多:まじで。そういうこと言うひとは、やっぱ見た目がかっこいいひと?
しまお:かっこいいわけじゃないけど・・・。
本多:おとなっぽい?
しまお:うん、おとなっぽい人。でも私、口がかたい人が、よく分かんない。「ふつう言うでしょ」って思っちゃう。
本多:うそー。僕ねぇ、口かるいってよく言われるんですよ。でも、「絶対言わんといて」って言われたことは、言わないんですよ。
しまお:でもさ、「絶対言わないで」って言うことがおかしいじゃん?
本多:あ、それを「言ってる」ってことが? ああでも、それは「おまえだけやから」ってことで言われて。で、僕が言わんかったら、その「絶対言わんといて」って言ってたやつが、みんなにもう「誰々とつきあってる」みたいなことを自分で言ってて。で、他のひとから「本多くん、知らんかったん?」って聞かれて・・・もう、めっちゃ複雑じゃないですか。知ってたのに言わんかったから「うわー」ってなることが、多々ありましたね。
本多:しまおさんは、口かるいですか?
しまお:自分で判断しちゃう。ひとに「言わないでね」って言われても、「それは言ってもいいだろう」と思ったら、言っちゃう。私ね、小学校のときに、元担任の先生が結婚したんですよ。すっごい人気の先生だったんだけど。
本多:男の先生?
しまお:うん、男の先生。で、私の同級生の女の子が、その結婚相手の名前を知ってたの。で、「絶対に言っちゃだめだよ」って、私言われたんだけど、「先生の結婚相手の名前はべつに、言って困るようなことじゃないだろう」と思って。先生に言われたわけじゃないし、友達から聞いたぐらいなわけだから。
本多:むっちゃ、自己判断じゃないですか。
しまお:それで言ったら、すごいブワーって広がって、すっごい友達に責められたの。でも、すっごい腑に落ちなかった。そのとき「私はぜったい悪くない」と思って。今でも、自分は悪くないと思ってる。
本多:ほんとに? 心のそこから? 友達は「言わんといて」って言ったんでしょ?
しまお:でもさぁ・・・その気持ちが「ゴシップ」じゃん。だって、ほんとにその先生のことを思ってるんだったら、その子だって言わないはずでしょ? だけども先生はべつに「言ってほしくない」なんて思ってないと思ったから、私は。
本多:え、先生は、うわさが広がったことは、どうやったんですか(笑)?
しまお:べつになんとも思ってなかったと思う。
本多:ほんとに? それ、そうとう主観入ってないですか? でも、ビビったでしょ? しまおさんが言ったことによってバーッと広まったことに関しては。
しまお:一日で超広まって(笑)。
本多:そこに対しては、ちょっと罪悪感は、ある?
しまお:うーん・・・でも、よく分かんないけど、なんで私がそんなに責められなきゃいけないのか・・・。その子、バッと教室入ってきて「まほちゃん、言ったでしょ!!」って。
本多:「まほちゃん、言ったでしょ!!」って(笑)。で、しまおさんは?
しまお:「お、おぉ・・・」て(笑)。なんでそんな私が、言われなきゃいけないんだろう、って。で、「これから私はもう、自己判断でいく」って思った。・・・よく分かんないね、この話。
本多:いやいや。でも、小学生でしょ? 変わった子というか、頑固な子というか(笑)。
本多:なんかね、芸人のひととかがね、役者やったりするじゃないですか。でも、そういう人にとって、役者って本職じゃないじゃないですか? それで、たまにそういう方に会ってしゃべってるときに「どういう感じなんですか?」って聞いてみたら、「アルバイトに行く感じで、行ってるわー」みたいなことを言う人がいてはって。しまおさんも、『クワイエットルームにようこそ』に出てるじゃないですか。それって、どういうモチベーションなんですか? 誘われたから出るって感じ?
しまお:まあ・・・ミーハー魂で。
本多:「ミーハー魂」(笑)。それ、かなりのアレなんですねぇ。根幹というか、核というか。楽しかった? 演技するっていうのは。
しまお:演技とかは、ひとでなしにならないと、できないと思った。
本多:「ひとでなしにならないと、できない」!?
しまお:なんか、「やさしい気持ち」を断ち切るスイッチがないと、できないと思った。
本多:なんでですか?
しまお:私は、演技はぜんぜん出来ないと思った。
本多:じゃあ逆に、文章とかマンガとか書いてるときって、そのキャラクターになってたり、自分のことやったら、自分の過去を思い出したりして書いてるから、それって・・・。ああ、でも演技じゃないか、それは。やっぱり「自分じゃないキャラクターを書く」っていうのと、「自分じゃないキャラクターを演じる」っていうのは、ぜんぜん違う?
しまお:ぜんぜん違いますね。だって、自分じゃないキャラクターは、やっぱり客観的に書いてるもん。「こう言ってるなー」とか「こう思ってるんだろうなー」とか。だって、こっちから見た本多くんを文章で書くとしたら、本多くんを観察した結果でしか、書けないから・・・「本多くん」には、なれないじゃないですか。でも、演技はもっと一緒になんなきゃダメでしょ?
本多:役と、自分が?
しまお:うん。だって「その人」になったことないし。作んなきゃいけないんでしょ? 「その人」を。
本多:でも、セリフは書いてあるから、それを読んでれば・・・。
しまお:ええー。でも・・・分かんない。
本多:じゃあじゃあ、他のラジオとか文筆業とかは、ある意味、すべて自分の言葉じゃないですか? でも役者に関して言ったら『クワイエットルーム〜』で言えば、松尾スズキさんが書いた言葉を、喋ってたわけでしょ? それは、違いみたいなんってあるんかなぁと思って。
しまお:あるのかな。あるんだと思うけど・・・。私は、自分主導じゃなきゃ、なんにもできないから。コントロールができないから・・・。
本多:コントロールができない?
しまお:もし、自分で演劇作って自分で演じたら、できるかも知れないけど。
本多:ああー。
しまお:なんか「ひとが何を求めてるか」とか、考えちゃう。いろいろ。「うまくやんなきゃ」とか、「人にどう見られてるか」とか。
本多:それは、他のひとの作ったものやったらってこと?
しまお:そうそうそう。
本多:でも、自分主導でそれをやったときっていうのは?
しまお:やったことないから分からないけど、そのほうが楽な気がする。
本多:でも、そのときも「他の人がどう思うか」っていうのは、あるわけでしょ?
しまお:いやいや、「書いた人が、どう思うんだろう」って思っちゃうから。松尾さんがいいようにやらないといけないのかな、とか。どこに気持ちを置いていいのか、分かんない。
本多:ああー。じゃあ、あれはそういう気持ちでやったんですか?
しまお:あれはもう、ただ言ってるだけだから(笑)。
本多:面白かったですけどねー。じゃあ、そんなに「役者やりたい」っていうのは、ない?
しまお:ない! ぜんぜんない!
本多:ない。目覚めたり、しなかった?
しまお:諦めがついた。逆に。
本多:(笑)。
しまお:なんか、何かしらできるんじゃないかと思ってたけど、ぜんぜん出来ないんだなーと思って。「自分を消す」っていうことが、たぶんできないんだなーって思って。
本多:自分のことは、好きですか? 嫌いですか?
しまお:それはみんな、どっちもどっちなんじゃないですか?
本多:いやもう、そんなんじゃなくて、どっちかで言ったら。
しまお:どっちもどっちじゃない?
本多:くっそー(笑)。
しまお:いやでも、「すごい好き」ゆえの「嫌い」とか。
本多:ああー。
しまお:でも、好きは好きだね。
本多:好きは好きですよねぇ。
しまお:うん。私ね、また小学校のときなんだけど(笑)。
本多:うん(笑)。
しまお:しかも、「先生の結婚相手の名前の話」と同じ子だよ。その子に「まほちゃんて、ほんと自分好きだよね」って言われて。小学生のときだよ? あ、中学1年だったかもしれないけど、そう言われて。すごいびっくりした。「みんな、自分のこと好きじゃないんだ!」って思って。「自分でよかった」って思わないのかな、って。その子は「自分好きって、けっこう恥ずかしいよね」みたいな。
本多:ああー。そういう風潮って、ありますよね。
しまお:けっこうショックだった。それ言われたのが。
本多:でも人のことも好きでしょ? なんていうか、「人」を見る目が・・・なんていうか「嫌な目」じゃない、じゃないですか? 悪いところを、そんな見ないでしょ?
しまお:うーん。まあ、総合的に見てますよ。
本多:まじで。客観的に?
しまお:うーん。と、思うけどね。
本多:じゃあ、ちょっと次の・・・。無理に飲まずに。
しまお:ジンジャエール飲もうかな。
本多:僕もじゃあ、ちょっと酔っぱらってきたんで・・・。(店員さんに)すいませーん。ジンジャエール2つください。
店員:甘口、辛口どちらが?
しまお:辛! 辛口で。
本多:じゃあ僕も、辛口で。