#1 喫茶チロル

案内所を始めることになりました。まずはやっぱりチロルからかなと思います。
僕にとって、それからヨーロッパ企画にとって魂のふるさとというべき場所です。

ヨーロッパハウス(ヨーロッパ企画事務所)から歩いて5分ほどのところにありまして、よく書き仕事をさせてもらったり、打ち合わせをしたり、撮影で使わせてもらうことも多いです。メンバーとか知り合いに会うこともしばしばで、大歳くんが姿勢をすごく低くして何かを書いていたらそれはイエティの公演が近いというしるしです。紙と目の距離が近いほど初日も近いと考えてよく、0センチになるとそれは初日だということです。チロルは書き物をするには机が低いんです。もちろん書き物をするための場所ではなくって喫茶するための場所なんですけど。それでも居心地がよすぎて身をこごめながらもついつい書きものをしてしまう、という。そんなすべてがちょっとミニサイズの古きよき喫茶店です。

僕が生まれたころにはとっくにもうあったんですが、大学生の頃にはまだ入ったことがなく、店の看板に書いてある「チロル」という文字が色あせて古めかしかったり、木の扉が重厚っぽかったり、看板の「スパゲティ」の文字が魔術的だったりで、お店の前を通るたびに「この怪しげな店内には一体どんな常連客が…」と想像をたくましくしていて、それで生まれたのが「冬のユリゲラー」、のちの「曲がれ!スプーン」という作品です。それであるときいざ入ってみたら、まったく庶民的ないいお店で魅了されたという。

以来、チロルは僕やヨーロッパ企画にとって作品の源泉でもありまして、「祗園太郎」シリーズでは太郎の行きつけのお店になってますし、ドラマ「ドラゴン青年団」に出てくる喫茶店も「チロル」という名前をお借りしました。ファンタジーらしく「トロル」にしようかとも思ったのですが、チロルを知らないとよく分からないな、と思ってまんまにしたという。「ロケコメ」という番組で友近さんとコメディをさせてもらったこともあります。他にも作品の内外でしょっちゅうお世話になっていて、そういう意味じゃまさに、日常とフィクションをつないでくれる、魔方陣的なスポットといえるかもしれません。

肝心の喫茶店としての紹介をしそびれてました。看板にもあるとおり、珈琲もさることながら、カレーや焼きめしやスパゲティが自慢のお店です。どれにも目玉焼きを載せることができて最高です。祇園太郎さんは「厚切りカツカレー」を勧めてました。モーニングもいいですね。朝は6時30分からやってまして、お昼間はランチを食べにくる働くおじさんたちで混みあう時間帯もありますが、常連さんたちが相席で詰めてくれたりして、入れないことは滅多にありません。僕はハムエッグ定食専門です。店主のお母さんは聞くとお店のことやら地域のゴシップやらなんでも教えてくれますし、聞かないでも教えてくれます。

京都にお越しの際は、ぜひ一度立ち寄ってみてください。ノートも置かせてもらってますし、一筆いただけたらそこからまたドラマが始まります。

(2015.2.27)

京都案内人:上田誠

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[喫茶チロル]

場所:京都府京都市中京区御池通大宮西入ル
門前町539-3
TEL:075-821-3031

※定休日等詳しい情報については各スポットへお問い合わせください。

※掲載内容は取材・更新日時点での情報です。最新情報ではない場合もございますので、あらかじめご了承ください。