#10 卯今

『ヨーロッパ企画の暗い旅』ディレクターの西垣です。
僕は事務所近くにある居酒屋さんをご紹介します。
チロルに行って二条城を観光して、晩ご飯は何にしよ〜、
せっかく来たしおいしいものを食べたいなぁという時におすすめです。
お店の名前は「卯今」。
店主さんが「卯年」生まれで、
うさぎが暖簾やお皿にあしらわれています。
「今」というのは今の旬の食材を提供するという意味らしいです。
その言葉通り、黒板には店主さんが目利きした旬の魚介や地鶏がずらっと並び、
おすすめのメニューは…と言いたいですが、どれもうまいです。
地鶏を食べ比べや新鮮なキンメを堪能したり、魚介とコーンのチャーハンがあったり、どの料理にも工夫がなされていて、感動します。

僕が初めて行ったのは5年くらい前。父親と行ったのが最初でした。
京都に来ていた父親とふたりで夜に二条近辺を散歩していました。
といっても父親は歩くのが早く、僕の5歩分くらい前を歩いています。

「あ、そこの角曲がって」と後ろから声をかけ「そこ」というと、
父親が足をとめ、
僕はヨーロッパ企画事務所の前で「ここ」と言いました。
「そうか」と父親はまた自分のペースで歩き始めました。

ふとその後ろ姿を見て、
受験の結果発表を大阪大学に見に行ったことを思い出しました。

歩くのが早い父親は受験番号を手に持ち、僕が掲示板につくころには、
父親がUターンして帰ろうとしているので、あ、落ちたんだなと思いました。
掲示板を見ずに、父親の後ろをついていく僕。
励ましていらんけど、励ましてくれよ。と思っていました。
その夜も、働くとはな、とか、俺の会社ではな、とか話していらんけど、
話してくれよと思いました。

そんなことを考えていると、父親が、あるお店の前で足を止めました。
それが「卯今」でした。父親はお酒には目がなく、店の外から日本酒のビンがたくさん並んでいるのが見えたのでしょう。
僕らは一杯だけと店内に入りました。
僕は出し巻きを注文しましたが、こういうところでは魚介やで、
とまったく息が合いません。
そして運ばれてきた、出し巻き。「僕が全部食うから」と言って一口食べた出し巻きは、
今まで食べたどれよりも美味しかったのを覚えています。
父親にもすすめると、
「うまい…たしかに、めちゃめちゃうまい、そや、これはうまい。ほう、うん、うまい、そやけどうまい」と、うまいということをいっぱい言いました。
それをきっかけにお酒がすすみ、父親の仕事のこと、将来のこと、お母さんのことなど、ふわふわと浮いてきました。

それ以来、県外から友達が来たとか、また京都に父親が来たとか、
半年に一回くらいご褒美に行っています。

(2015.7.3)

京都案内人:西垣匡基

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[卯今]

場所:京都市中京区姉小路通西堀川
西入樽屋町474
TEL:075-777-8134

※定休日等詳しい情報については各スポットへお問い合わせください。

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