[ヨーロッパスタジオ]


オセロ道 立志編最終回
諏訪VS上田

 諏訪は、上田にオセロで10連敗したことをきっかけにしてオセロを本格的に始めた。それから2ヶ月を経て、 2004年、元日、京都アートコンプレックスで2人はふたたび闘うことになった。

オセロ道立志編頂上決戦。諏訪はどこまで強くなったのか?果たして上田に勝つことができるのであろうか?永野によるテクニック解説も含め、完全ドキュメントでお届けします。熱いので注意。
会場:アートコンプレックス1928
○先手:諏訪 ○後手:上田
コメント/石田、酒井、永野、イルリメ、ヒカリヒカル



解説陣、観客、そしてライバルの永野が見守る中、
緊張感をたぎらせつつ、それを表にださない諏訪・上田。

上: じゃあまあ、サクっとやりますか。
諏: やろう。
上: 僕ら2人とも早打ちなんですよね。
諏: うん。あんまり考えないで打つねえ。
上: 僕は今のところ諏訪さんに一回も負けた事が無いという状況ですね。
石: おおー。
 
諏訪、黙って盤に石を並べている。

上: (諏訪に)なんで何も答えないんですか、今のには(笑)?
イ: 復讐なんやね。
石: ええ。
永: この日のためにやってきたようなもんだから。
石: (諏訪を見て)正座ですからね、これ(笑)。
永: いや、正座はいいよね。
石: (笑)どういうことですか?
永: やっぱり姿勢が良いと呼吸も整って、(頭を指差して)クリアになってくるんで。
石: (笑)
永: (諏訪は)完全に勝ちに行ってるね。
 
なぜか熱い永野。
試合スタート。

一手目
石: 始まりましたね。
ヒ: お、来ましたよ。
永: おっと、これはねずみ定石ですね。
イ: (笑)動物出てくるんですね。
永: ねずみ、うさぎ、虎、牛の四大定石があります。
石: 誰が作ったんでしたっけ?長田五郎でしたっけ?
永: ・・・長谷川五郎ですね。
石: すいません(笑)。全然覚えてなかった。
イ: 覚えられんやろうそりゃ(笑)。
石: どうなんですか?どっちが有利ですか。パッと見て。
永: いや、どっちとも言えないです。
石: ああ・・・。
永: 2人とも早いですよね、返しが。
石: どうですか、打ってて。諏訪さんどうですか?
諏: ・・・(ボソッと)いや、緊張してます。
石: (笑)集中してますねえ!
上: (盤を見て)俺これ負けてるんかなあ?
石: (永野に)どうなんですか?
永: これはね、・・・ああー、(盤をじっと眺めて)諏訪優勢ですかね。
諏訪優勢
上: あら!
石: おおー。
上: いかんなあ。
永: 完全にねえ、(石を)囲む、囲ませるという観点で見ていったら、完全にこれは白が黒を囲んでいますね。今ね。
石: 囲んでますね。白が黒を。なんとなく。なんとなくですけど。
上: はあはあ・・・(うなづいている)。
永: ここを取るってのはかなり強いですよ、やっぱり。
上: どこですか?
永: ここ。偶数理論に基づいたら、(盤を指して)ここが白で
石: (笑)ああー。
酒: 専門用語が(笑)。
永: 諏訪は悪手を打たない限り、勝ちますね。
皆: ええー!?
上: もうこの時点で!?
永: うん。
イ: (諏訪を)喜ばしていいの、まだこの段階で?
石: ねえ。
永: いや、大丈夫ですね。
上: (盤面を見て)ああ、本当ですね。僕もうねえ、やばいですもんね。打てないとこ多いですもんねえ。
永: 諏訪優勢ですね。石のバランスは4:6の割合で前半は進むといいですね。自分が少ない方が後半に有利です。そうそう。黒いいですよ。
石: あ、本当だ!
永: 黒はガーっと置く場所があるわけですよ。うん、もうこれは見えてきましたね。
石: (笑)ああ、え、じゃあ初勝利というわけですか?
永: もう、決め付けてしまうのはまだ、アレなんですけども、
上: ほー。
永: まあ黒はかなり優勢ですよ。
上: きれーですねえ(笑)。
永: ま、ただしこれは悪形とされてますけどねえ。ウイングです、これは。
ウイング
永: 諏訪はウイングを作った。悪手です、これは。
石: (諏訪に)そう、言われてますけど、
諏: いやいやそうなんすよ、ウイングはすーごい気になるんですよ。
永: さっきウイングを作ってしまったなっていう顔をしてたんですよ。
上田のX打ち!
永: (興奮して)あ、出ましたねX打ち
諏: (興奮して)おおおー!
上: ふっふっふ。
永: この段階でX打ち来ましたか!
諏: ええー!
石: (笑)何なんですか?
酒: えらい興奮してますけど。
上: これびっくりでしょう?
永: 動揺したー!
石: 永野さん、全然やってないでしょう?(笑)
酒: あなた闘ってないですから(笑)。
石: この時間で(午前3時過ぎ)興奮してるの永野さんだけですからね(笑)。
ヒ: 僕らテンション低いですよねえ(笑)。

しかし、上田、早くも石を置く箇所の少なさに困っている。

上: ・・・僕角取られますねえ。
石: ああ!もう角取られるじゃん!
上: そう、そう、そう。いつのまにかねえ(しぶしぶ打つ)。
永: だってそんな序盤でX打ちするなんてねえ。
イ: 野暮?
永: 野暮ですよー。野暮図ですよ、ほんとにもう。
イ: 野暮図?何それ(笑)、オセロ用語?
永: いや、違いますけど(笑)
上: あれ、僕もうパスですねえ。
上田序盤のパス!
諏: (喪黒福造のように)どーん!
上: (びっくりして)何ですかどーんって(笑)?
皆: (笑)
上: 負けってことじゃないでしょう(笑)?
永: パスですよ。白の置ける場所がなくなったわけですよ、この段階で。序盤戦ですよまだ。
上: もう圧倒的に駄目なんだ。
永: けど僕はパスをやって諏訪に勝ったことがありますけどねえ。
諏: ああ、あるなあー。
酒: いや、永野さんのことはいいですよ(笑)。
上: あ、駄目だ。自動的にここに置かされるんですよ!
永: 指定打ち!
上田、屈辱の指定打ち!
イ: もう遊ばれている?
上: うん・・・。
石: ああ!ほんとだ!
永: ここで角に置きましたね。そして、ピラミッドができましたねえ!
ピラミッド(諏訪の手)
上: 恐ろしいなあ!
永: そう、今までこうやって上田くんに負けてきたんですよ彼は。
上: ああー。
永: いつもこういう闘いになってたんですよ。
石: あ、これだけど白またパスよね。
上: パスです、パスです。
石: ああもう、全然もう...。
永: そう、そう。それで、ピラミッドが大きくなって行きますから、どんどん。
石: うっるさいなあもう(笑)。
永: ガーっとこう、侵略してくるわけですよ。
皆: (笑)
イ: なんか侵略してくる時の呼び名とかないの?
永: 呼び名はまだないですねー。
酒: まだないんですか(笑)
永: いやまあ、「毒におかされていく」とかたまに言いますけどね。
上: (笑)ええっ、1人で言ってる。それはいつも永野さんが黒に負けるからじゃないですか(笑)。
酒: 相手が諏訪さんだから。
上: 自分が白だからじゃないですか、いつも。
イ: 苦しみが混じりすぎ。
永: 痛みとしてきますからね。
石: 自分の感情が入りすぎですよ。
ヒ: これでも下手すりゃ盤面が真っ黒になるんじゃないの。
永: そうなんですよ。
石: そんな強いの?
イ: そんな強くなったの?
上: ここだってね、2箇所しか置くとこないんですよ。
石: 置いてよ。
上: 嫌ですよー。どっちもピラミッドできるじゃないですか。
石: うわっ、ほんとだ。
イ: あーあ。
上: あがいてみるしかないなー。
イ: きれい過ぎる。
永: うん、きれい過ぎる。
石: なんで諏訪さん、ここの、この一番上には打たなかったんですか?
永: えっ、何故かって。角取られるからだよ、白に。
イ: (永野に加勢して)バカヤロー、お前。当たり前だろ(笑)。
石: あはは(笑)
永: 諏訪は今きれいに勝とうとしてるんだよ。
イ: バカヤロー、お前。
上: オセロ、こわっ。オセロ、こわい。これ全部真っ黒になるわ。
上: パス、パス。
皆: うおー。
永: すごい試合してるわ。
上: えー。
イ: 同志としてなんか一言かけてあげたらいいんじゃないの、こういう時。諏訪さんに。
永: いやもう十分でしょう。この盤面だけで十分でしょう、彼は。
皆: あはは。
イ: 声なんていらない、もうすでに届いていると。
永: 絶対にミスらないようにきてますね。勝ちが決まっているにもかかわらず。
諏: ええ。
永: アラがでない。
石: えっ、どういう意味ですか?
永: えっ、それがどういう意味かって?(キレ気味で)そのままだよ、だから。
皆: あはは(笑)
イ: 深く追うな。
石: はいはいはい。(永野を指して)こっち見てる方が面白いですけどね。
上: この1箇所守ったら、僕の勝ちみたいのとかありますか?
皆: (笑)
ヒ: そんなルールないだろう。
石: 気持ちだろう。

上田、打ちたくないが、しぶしぶ打つしかない。

上: もうねえ、置かされて、犯されてっていうか。
皆: あはは(笑)
石: いろんな意味でね。
上: 脚本家なんで二つの意味をかけましたけど。
石: 脚本家なんで(笑)。言葉遊びしてたねー。
上: そうやねー。
永: 置けば返されるっていう展開ですね。白が返されていきますね、どんどん。
イ: やらされてる感バリバリでしょうねえ、今上田君ねえ。
上: そうですねえ。
石: オセロ名人とかいるんですか?
永: うん、いる。
石: 段とかもあるんですか?
永: あるある。
酒: そういうのはまだ?
石: 持ってないんですか、二人は?
永: まだ取りに行ってないからね。
イ: 行こうや、それは(笑)
永: いやまだね、オセロ道の立志編でね、上田を倒すっていう。
石: はー、じゃあこれもう完結ですねえ。
酒: そうですねえ。
イ: 復讐から始まっていくんやねえ(笑)。
上: コワイわ。黒がコワイ。
諏: フフフ。
永: そうそうそう。
上: あっ、黒がコワイですか?
永: うん。

諏訪、手持ちの石がなくなり、上田の石を使いだす。

イ: あっ、足りない。
石: 敵の石を使ってますね。
諏: それだけ上田がパスしてるってことやからね。
上: あー。

上田は、客に背を向けて打っている。

イ: あの、上田君の姿勢ってどうなんやろ。
永: 姿勢。
イ: 客に背を向けて打つっていう。
永: いやもう、みじめで仕方がないんだろ。
上: ジーパンの股がちょっと破れてるっていうのもね。
石: みじめで仕方がない(笑)
上: これ、みじめですよ。
永: 本音ですよ、今のは間違いなく。
上: 盤面に涙が落ちるかもしれない。
諏: はー。(容赦なく石を返していく)
上: まあ、パスかな。
永: パス。じゃあ、次、黒。で、終わり。
諏: 終わりですね。
皆: うおー!

客席からも、盛大な拍手。

諏: おーし!
永: おめでとう。
諏: わーすごい。
上: 参りました。
諏: わー、びっくりした。
イ: 数は?
永: これは...。
諏: 57対6
皆: 6!
上: こんなに負けるとは。
石: ということで諏訪雅の勝利です。
諏: (感無量で)ありがとうございます。
  
諏訪圧勝!
  

諏訪は上田に勝った。
いや、諏訪は諏訪に勝った。

 オセロ道を歩みだすきっかけとなった、上田という遥かな山の存在。当初それは、到底手の届かない頂であるように思われたが、諏訪はその手で、その頭脳で、そしてその集中力で、とうとう1年後のこの日、自分のものにしたのであった。

 諏訪がその頂から見た朝日、それは、新年の始まりを告げる初日の出であると同時に、これからの長い長い道程を示す、明日への陽光であった。

オセロ道 立志編 〜完〜

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