2月7日(木)この日は関係者内からも身内であるはずの劇団内からさえも、連日とは少し違った熱い注目を集める「黒木正浩映画特集」です。
MCはヨーロッパ企画の若手ユニット「ソリ」から大歳倫弘。そして昨年10/21(日)コモンカフェにて行われた、記録より記憶に残るイベント「黒木祭’07」にてMCを担当した角田貴志。
 
  大歳 今日はヨーロッパ企画の中でも一番カルトな人、「黒木正浩監督特集」ということで。かなりディープな特集になってると思うんですけども。どうですか? 黒木さんという人の印象は?  
  角田 ど〜なんでしょうね。…「おかしな人」という認識しかしてないですけど。そもそも役者としてヨーロッパ企画に入ってきたんですけど「役者の枠には収まらん」と。  
  大歳 ちょっと枠を超えちゃったんで…今や映画などを撮って活動をしている、と。では、黒木正浩監督です。どうぞ!  
  黒木 いや〜…今日ちょっと香水ふってくんの忘れてねぇ。  
  大歳 そうですね、確かに今日ちょっと匂いが。  
  黒木 男が香水ふるって言うのは、昔の武将なんかが鎧に香をたいて、戦いに行くときに…  
  大歳 早速、映画観てもらいましょうか。  
  角田 そうですねぇ。この人登場しても、全くご存知ない方にはね、「一体誰なんだ?」という感じでしょうし。  
  大歳 紹介の意味も含めて映画を観てもらう、と。  
  角田 映画を観て知っていただいたほうが、一番手っ取り早いですよね?  
  黒木 (角田を指差して)天才。  
  角田 おっと、「天才」の称号頂きました。  
  大歳 今から観られる方は、「あんまり気合入れて観ない方がいい」ということだけ、ちょっと。  
  角田 いわゆる「ヨーロッパ企画的」なものを求めて観ると、ちょっと違うぞと。こんな世界もあるんだな、ということで。  
  大歳 独特の世界観をお持ちなので。  
  黒木 恐縮です。  
 
この日は昨年行われた黒木正浩プロデュースのイベント「黒木祭’07」以来の、久々の「智恵光院雀鬼」の上映。ヨーロッパ企画のイベントなどでも、数回しか上映されたことのない黒木映画とあって、初めて目にするお客さんも多かったのではないでしょうか。
ヨーロッパ企画とは、また違った世界観に引き込まれる方も多かったのでしょう。「智恵光院雀鬼」上映後の会場は黒木正浩という監督の、一挙一動に会場の誰もが興味津々。この後のトークへの期待を含んだ視線を受けつつ、監督の再登場です。
 
   
  大歳 まぁ、どっから話をしていくかっていうと…(客席から)笑い声が、聞こえるんですよ。  
  黒木 ねぇ!? 「笑うところがどこにあったんやろう?」と。  
  角田 あ、監督はそういう気持ちでいらしたわけですね。  
  大歳 (監督は)大マジなわけですよね?  
  黒木 うん、撮ったときは真面目に。  
  角田 撮ったときは、この映画を観て笑う人なんていない、と思ってたんですよね。  
  黒木 いや、もうカッコいいものしか撮りたくなかったから、うん。  
  大歳 それもそうなんですけど…役者の人たちも笑ってるんですよね。  
  角田 どういうことですか?  
  大歳 なんか、ニヤニヤしてるんですよね。あと、笑い声聞こえるなと思ったら…カメラの人が笑ってるんじゃないですか?  
  黒木 いや、あれはもう現場が楽しくて!  
  大歳 いや(笑)、現場が楽しいから許されるとかじゃないですよ!?  
  角田 それ(現場の楽しさ)がフィルムに焼きついてるのは、いかがなもんかと、思いますよ。  
  黒木 こんないいところで上映すると、音が…。  
  大歳 やっぱり音がいいので、笑い声がめっちゃ聞こえるんですよ。  
  黒木 びっくりした、俺も。  
  角田 もともとイベントとか、ちょっとザワザワした中で上映したことしかなかったので、それが実際こうして映画館で流れると、ちょっとねぇ。細かいところの粗が。今日初めて気付いたとこも、あるんじゃないですか?  
  黒木 そう! びっくりした〜。もう3つくらいあったよ!  
  角田 まぁ、そもそもね、ロケ地とかも身の周りの場所で、カメラ回してるのも、まぁ言えば素人ですよね。音楽も知り合いの方に頼んで。  
  黒木 そう、知り合いに作ってもらって。  
  角田 逆に言えばプロの手を使わなくとも、これだけの作品が出来る、と。  
  大歳 第1作目は、何点くらいの出来ですか? このあと続編が流れますけども。  
  黒木 俺ん中ではもう、100点。常に100点のものしか作りたくないから。  
  大歳 100点しか出さない、そういう「(黒木さん独特の)世界観」。  
  黒木 ぇえ(笑)。  
  大歳 すごいですねぇ。  
  黒木 ほんとにお寒い中、わざわざここまで観に来ていただいて…ありがとうございます。  
     
 
もちろん初鑑賞ではないはず、むしろ何度となく黒木映画を目の当たりにしてきたMCの2人にさえも、今回この京都シネマのスクリーン・音響での上映によって、新たな発見がいくつもあったようです。
MC大歳とMC角田の大小の疑問に次々と答えていく監督。その答えは監督の信頼する役者さんたちの演技、ひとつひとつに付けられた必然的かつ、細やかな設定ばかりです。ワンシーンに込められた監督の思いの深さに、MC2人が言葉を失う場面もちらほら。
   
  黒木 いい映画やったね! やっぱスクリーンで見ると全然違うわ!  
  大歳 「あの(劇中の)電話の音間違ってるやろ」と思ったんですけど。  
  黒木 あ、携帯の音?  
  大歳 びっくりしました。「普通の家の電話やん!」と思って。  
  黒木 あ〜電話ね(笑)。  
  大歳 はい。  
  黒木 誰でも電話やと分かるようにね。  
  大歳 あ、わざわざ「誰でも電話の(鳴ってる)音やと分かるように」?  
  黒木 うん。  
  角田 こうやって聞いてると、矛盾とか「ちょっとおかしいな」と思うところにも、細かい設定があるんですね。  
  黒木 ありますよ。全然おかしなところなんてないですよ。  
  角田 全て納得して聞けますね。  
  黒木 …いやぁ〜。  
  大歳 感無量ですか?  
  黒木 というか、思ってた通りの(きれいな)音じゃなくて、こんなにも良い音響で聞くと…。ねぇ?  
  大歳 (編集の)粗が。  
  黒木 うん! ちょっとちょっと! っと思って。  
  大歳 音、悪いですよ(笑)。  
  角田 音が悪い。  
  黒木 いや〜…ちょっと怖いな、これ。  
  大歳・角田 (笑)  
  黒木 いいのかな〜、こんなん(映画館で)流して。  
  大歳 お! 自分でもそういうちょっとダメだった部分も見えた、と!?  
  黒木 自分でも、「ぇえ〜っ!」てなった。  
  大歳 "反省"ですね。  
  角田 ま、今まではイベントとかちょっとワイワイしたとこで、流すだけやったんでね。  
  黒木 うん。  
  角田 例えば、撮影中とかの現場では、いろいろスタッフからも意見が出ると思うんですよ。  
  大歳 うん。  
  角田 その辺の判断というか。あんまり監督は(スタッフの意見に)聞く耳を持たないんですか?  
  黒木 撮影中は、その場のテンションでガーッと行くから。  
  角田 あ〜。  
  黒木 まぁ、たまに温度差を感じるときはあるけど。  
  角田 あ、スタッフとの(笑)。  
  黒木 後で言われて気付くんやけどね。  
  角田 いやいやいや(笑)。  
  大歳 (笑)  
  角田 実際にこれを、映画として観たときの強度といいますか。どんな感じやったのかなっていうところですよね。  
  大歳 そこですよ。  
  黒木 ねぇ。  
  大歳 そこはぜひ、アンケートに書いてもらいましょうよ。  
  黒木 ま、僕は読まないですけどね。  
  大歳 読んでくださいよ(笑)。  
  黒木 (アンケートを)読んでも僕は、(人の意見を)参考にはしないですから。  
  大歳・角田 (笑)  
  大歳 最近は(映画)作ってるんですか?  
  黒木 これ、「雀鬼3」もあるからね。  
  大歳 はい。  
  黒木 今「雀鬼」と続編を観ていただいて、分かったと思うけど…だんだんとカッコよさを、増していってるからね。理想形に近づいていってるから。  
  大歳 それは、何となく分かります。  
  黒木 …さすがやな、お前。  
 
 
雪が降ってもおかしくないような寒さの中、会場に足を運んでくださったお客さんに、感謝の言葉を口にするだけでなく、MCの2人にも時折、敬意のこもった言葉をかける黒木監督。そこに垣間見えるのは、今なお、理想の「男らしさ」を追い求め続ける黒木監督の姿。その姿こそが、人を惹きつける所以なのでしょう。
今回上映された、「知恵光院雀鬼」とその続編。まだまだ序章にしか過ぎないようです。監督の中にはすでに「智恵光院雀鬼」の、壮大なるサーガが描かれているのでしょう。その場にいた誰よりも、監督自身が「智恵光院雀鬼」の更なる新しい展開を、楽しみにされているようでした。
気になる今後の黒木監督の動向は、ヨーロッパスタジオにてご注目ください!