[ヨーロッパスタジオ]>[特別対談 天野天街×上田 誠]

少年王者舘ホームページ:http://www.oujakan.jp/

上田
天街さんとは、名古屋で『ムーミン』を観ていただいて以来、僕らのイベントのトークゲストに出ていただいたりと、何となくおつき合いが続いてますよね。
天野
端から見たら接点がなさそうと言うか、全然違うものに見えるんだろうけど。
上田
でも天街さんが名古屋にいたり、たとえば維新派の(松本)雄吉さんが大阪にいたりっていうことが、僕が「京都で活動し続けよう」と思う理由として大きいんですよ。2人ともその土地にいないと生まれないような独特の舞台を作っていて、しかも「芸能」に近いというか、芸術的に閉じてる世界じゃない。それが何か…ガラパゴス諸島みたいで (笑)。
天野
勝手に放っとかれて、別の進化を遂げてるという(笑)。
上田
そうそう。それでいて、見ていて面白 い進化の仕方をしているんですよ。だったら僕も、そういう道を選ぶ方が面白いなって。だからどういう経路で今のような形になって、今後どういう風に進化していかはんねやろっていうのは、めっちゃ興味がありますね。
天野
でも知らん間に、そうなってるだけって感じだから。意識とかそういうのは、いつも後から付いてくる。
上田
でも僕のような作り手的視点で見ると、もう新作なんか作らなくてもいいんじゃないか? ってぐらいのレベルの人なんですよ。たとえば劇団で言うと、どんどん新作を作って実験していくべき時期の所もあるけれど、逆に「もう残り解散しかないじゃん」ぐらい、完全に完成された世界を作ってる所もある。そういう意味では天街さんが「新作をやる」と聞くと、すごくドキドキしますよね。ここから次の一手って…。
天野
「一体どうすんだ?!」って(笑)。
上田
それがすごく面白いんですよ。「次の一手」が全くわからないコマの進め方をしてる人だから。それで天街さんは王者舘だけじゃなく、サイドワークも多いじゃないですか? 他の作家さんが書かれた作品を演出したりとか。実はそれって、お客さんからしたら本領が割と見えやすいと思うんですよね。輪郭が見えてくる…とでも言うんでしょう
か?
天野
そうですね。王者舘でやってることって、とにかく輪郭を見せまいとしてるから。自分に一番近いワークとしてやるから、どうしても恥ずかしい…っていうんじゃないけど、何だろうね? とにかく細かく、バラバラにしたくなっちゃうんですよ。
上田
だから底が見えないというか…普通なら何かの手がかりが欲しくなる所を、それをあまり作らずに、泳ぐように進んでる感じ。ちなみに脚本って、夜書かはるんですか?
天野
大体夜ですね。
上田
やっぱりそうなんですね。僕はあまり、夜に脚本書けないんです。夜って基準がなくなるでしょう? 周りとの。実際夜に書いた手紙って、何か変な風になったりします し。
天野
そうそう、理知が働きにくくなる。
上田
だから僕の場合、何かしがみつく棒が欲しくなる。僕が主に喫茶店で執筆をするのは、周囲に他の人がいる中で書くと、多少は人との距離が見える物ができるからなんです。
天野
それはすごくわかる。俺はともかく、あらかじめ自分の頭で理性的に構築するってことをしないのね。一応全体の構図みたいなのは考えるけど、書いているうちに枝葉が行き過ぎて、確実に止まっちゃう。だからこれによって全体像が、どんどんどんどん…。
上田
伸びていっちゃう?
天野
いろんな所に思考が伸びていくのが、抑えられなくなって止まってしまうという状態が続くんです。そういうわけのわかんない、寝てんのか覚めてんのかすらもわかんない感じになってから次の行を書く、という書き方をいつもしちゃってる。だからキリキリまで、ボンヤリとしてますね。もはや諦めみたいな感じで(笑)。上田さんはともかく、ものすごい理知でキチンと書かないと、当然のごとくできないだろうけど。
上田
逆に天街さんは、そういういろんな手がかりをできるだけ外した所から、ジワ〜ッとにじみ出てくるように作ってはる感じがしますよね。それが僕には想像できないんですよ、過程として。「見つめる鍋は煮えない」じゃないですけど…。
天野
そういう格言があるんですか?(笑)
上田
あるんです(笑)。物を考える時にはいったん置いておく方が、考えがまとまるという。僕はそんな感じで、アイディアが煮詰まっちゃった場合は一度寝てしまったりと、逃して逃して書いている。でも天街さんは逆に鍋をずっと見つめ続けて、その焦点がボケてきた辺りでもう一度裏返してっていう、そういう感触で作ってるというイメージがあって。
天野
そうそうそう。すごい感触だよね(笑)。でも実際、最初に決めておいた場所 や世界などの設定は、どんどん考えていくうちに、ボンヤリとしながら無くなっていくんです。蒸発していくんですよね。で、残ってしまったそのエキスみたいなのが、一体何だろう? と、そういうやり方になってます。
(構成:吉永美和子)