[ヨーロッパスタジオ]>[特別対談 天野天街×上田 誠]

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上田
脚本は、最初から1行ずつ書かれます? 僕は話の途中から書いたりもしますけど。
天野
順番に書きますね。ただ俺の場合、話の時間軸をむちゃくちゃひん曲げるから、その時は気が付かなくても「ここにあったモノが実はあそこにあった」みたいなことが、しょっちゅう起こるんですよ。でもそれを書 き直す時間を、あまり持てないような状況にしてるんです。だからいつも、脚本がギリギリになってしまうんだけど(笑)。
上田
ああ、僕も『サマータイムマシン・ブルース』の時、同じ感覚になりました。
天野
確実にそうですよね、あの作品は! 時間をいじくってるから。
上田
あれは話のスタートがゴールにつながるから、どこを決め所にして書き始めたらいいのか?  というのが、すごく難しかったですね。『あんなに優しかったゴーレム』みたいに、最初から舞台にゴーレムがいて、みんながリアクションを取っていくという芝居の方が、めっちゃ書きやすい。でも天街さんのお芝居って、劇が始まる所から…って言うと変に聞こえますけど、客入れの段階からすでに芝居の世界が始まってたりしますよね?
天野
だからそれは「にじませたい」ってことなんですよね。クッキリとじゃなく、ちょっとぼやかした感じで始めたい。もともと物事が始まる前と、始まってからと、始まった後…つまり人間が生まれる前と、今と、死んだ後みたいなのをぼやかして見せたいという願望みたいなのがあるから。でも一方で、演劇や映画などの表現には「始まって終わる」という宿命がありますよね? その中で一応、時間というものがあるからということで…本当は“時間”って何なのかは、よくわからないんだけれど。
上田
そこなんですよね。普通だと「“時間”があるのはしょうがない」と、思考を停止させて作っちゃうんでしょうけど。
天野
それが俺は、どうしても気になってしょうがないってだけのこと。
上田
『ロケコメ!』ってTV番組をやった時にわかったんですけど、屋外で芝居をする場合、劇場のように客席と舞台を乱暴に幕で区切って、それを開けば上演開始ということができないんですよね。だから「始まりの前」というか…どんな状態に役者を配置して、いつ動き出すのかということを、すごく考えないといけなかった。そういう意味では天街さんも、いかにも「今から芝居をやります」みたいな、乱暴な始め方はされませんよね?
天野
あー、それはできないっちゅうか、何だろう?…うん、できない(笑)。本当に、気になってしょうがないんですよね。もはや性癖としか言いようがない。
上田
それで劇が終わる場合も、終わりのようで終わりじゃなかったり、逆に舞台装置まで残らずバラし切って終わったりするわけですか?
天野
でもそれも所詮、劇の中でのことですからね。以前『くだんの件』という作品で、舞台上で本当に宅配ピザを注文して届けてもらうことで、劇中世界の時間に現実世界の時間を介入させるという、そういうぼやかし方をしたことはある。でも終わり方っていうのは、もう終わるしか手だてがないんですよ、やっぱりね。ぼやかし方が一番難しい部分。
上田
僕は天街さんのずっと以前の作品は知らないんですけど、今までやってきた中での変化みたいなのはあるんですか? 結構僕としては、劇中に出てくる同じモチーフがつながっていくことで、他の作品との相対を形成してるという感じを受けるんですけど。
天野
それはそう見えるだけで、結局は同じことしかできないってことなんですよ(笑)。ずっとループシーンみたいな流れになってるでしょ?
上田
でも僕も割とそうで、芝居中の「ここ、グッと来るなあ」というポイントって、多分どの作品もそんなに変わらない(笑)。ただその中で、いろんな趣向や手法を試したい気持ちは常にあるんですよ。それは天街さんの作品でも、観ていて感じることなんですけど。
天野
うん。いろんな手法を試したい思いは確かにあるけど、それを包み込む枠となる世界観の設定とかは、いつもものすごくボンヤリとしかできない。それに俺はいわゆるドラマというか「物語」が書けないし(笑)。だからその世界観だけが浮き上がって、有機的につながっていかないんです。どこに設定しても同じ、つまり「どこでもない」ということ。
上田
あー、はいはい! 抽象の段階が1つあるというか。
天野
そう。だから今までの作品を見ると、大体そういう抽象化状態になってしまってますね。たとえば誰かが、この世界から消滅する。描きたいのはその一点だけだけど、それにまつわるいろんなモノを導入していくという、そういうことなんですよ。世界と人間がいて、こういう関係があるんだよ…という芝居作りはしない。というか、していない。
上田
さっき言ったように、いろんな要素を細かくバラバラにしちゃうと。
天野
いっつもそれをやりすぎて、わけのわかんないことになっちゃってるんですよね。わかりにくくしているつもりは、こっちとしては全然ないんだけど(笑)。ただサービス精神というものは、全く感じられない舞台だろうなあとは思います。
(構成:吉永美和子)